昔は目を閉じるだけで別世界に行けたのに。いつの間にか、瞼の裏が見えるだけになってしまった。

 ハルさんも、ヤンも葵ちゃんも。毎晩夜に「おやすみ」を言って寝て、起きたら「おはよう」を伝えて。心の中で気軽に話しかけて、相談して、理解してくれる大切な友達。

 いつの間にか私には私だけになっていた。


「元気になってほしい」

 そんな事を言われても、元気になれない自分がいた。ハルさんの言葉をハルさんの言葉として受け取れない自分がいた。

「大丈夫だよ、信じてる」

 今の私を見て、なんでそんな事が言えるのか。見てくれていない、全てが私の妄想なのかと思った。

「そばに居る、ずっと」

 一緒に寝て起きて遊んだ友達は、今は机の上にいる。もう随分とお話をしてないし、声も聴こえない。


 ある時、一緒に過ごしていた世界は唐突に狭くなった。最後に見たのは、学校の教室にまとまった世界から友達が出て行く景色。私の世界は急に灰色に変わった。机は5×5で25席あった。

 私は思う。あの世界に戻りたいって。今もまだ私のクラスに広がりはなく、私は私の席に座って灰色の空を眺めている。