私は週に2~3回、近所のプールでウォーキングをしている。


そこでは、夕方以降にチビッ子スイミング教室が開催されているのだが、今日はそんなプールでの甘酸っぱい恋の話を紹介したいと思う。


ちなみに、今日は北斗は絡めない。
純情な乙女心に武骨な男達は不似合いだからだ。



…………………………


某日夕方16時30分。


私がウォーキング専用の1コースでゆったりと運動をしていると、反対側の6コースが何やら騒がしくなった。


『キャーっ!!キャーっ!
   せんせぇ早くー!』




…っせぇわ!



毎度の事だが、とりあえずツッコむ。


チビッ子スイマー達のお出ましである。

『うっせぇ』とは思うものの、やはり元気ハツラツな姿は見ていて可愛かったりもするのだが。



『はーい、走らないよ~!
   整列~!ケントー!整列~!』





……は!!





……きたっ!!



子供達の後ろからゆっくりと現れたのは…



若きイケメンインストラクター


源氏の君





ガッチリと引き締まった逆三角の上半身…

美しくバキバキに割れたシックスパック…

しなやかな筋肉に覆われた長い脚…

そして、

切れ長の目に通った鼻筋の端正な顔…








あなたが好きです!!



私は思わずコース越しに叫びそうになるのをぐっと堪えた。


すると、源氏の君がチビッ子達を引き連れ、私のいる1コース側のプールサイドへとやってくるではないか!




やだなに?!
もしかして……
聞こえてた?!




スタスタと涼しげにこちらに向かってくる源氏の君……

まさか、今日はこの1コースで戯れようというのか?!


私のいる…この…泳がない人用の

1コースで!


いろいろと緊張と期待を膨らませ、あれこれと妄想しているうちに、ここ2~3年燻っていた私の乙女心が疼き始めた。



マウス・トゥー・マウス!!!



美しき源氏の君はプールに背を向けると、チビッ子に向かって叫ぶ。


『準備体操はじめー』







はーい!!


気づいたら私の幽体はチビッ子以上のテンションで叫んで、背後から彼を抱き締めていた。




ああ……あなたのその肩甲骨の間に……

私の顔を埋めさせてはくれないだろうか……

一度でいいから……





『イッチニーサンシー…
   はい、ゆうとー!ふざけなーい』





コラァ!!
ゆうとテメェ!
ちゃんとやれ!



お前がふざける度に彼の動きが止まるじゃねぇか!!

美しい筋肉の収縮が見られねぇんだ!

邪魔すんなら帰ぇれガキ!!



『ゆうとー、ちゃんと体操しないと怪我するぞー!』



彼が体を真横に倒し、脇腹を伸ばす。


ああ……

……美しい……美しすぎる……


この美しい殿方は一体どんな顔で『ゆうと』を叱っているのだろう。

笑っているのか?

真剣に見据えているのか?





私は今…

ゆうとになりたい!





……いや待て…

やっぱりならなくていい……

ゆうとになってしまうと、逆に大人の事情的な部分で不都合が出てくる……



願うならいっそ大胆に!

そうだ!!今ここで……

一生のお願い

を使ってしまえ!!




私は大きく天を仰いだ。



神様!!


そこにおられるのですね?!

おられるなら、私の望みを叶えて下さい!

私は彼の女になれなくていい!

妻の称号もいらない!!



ただ!!


……たった一度でいい……




彼の脇腹を一噛みさせてはくれないだろうか!






…………だが……


私の願いは聞き入れられなかった……


顔を下ろした時、すでに彼はチビッ子達を連れて6コースへと消えていた……





でしょうね。





…………………………


ウォーキングを終え帰りに受付に寄ると、そこには清潔感ある白いTシャツに身を包んだ源氏の君が……



『お疲れ様でした。
   いつもありがとうございます』





こちらこそ!!

ごごごごちそうさまでした!!






恋は焦らず……ってネ!!べーっだ!ラブラブ