2019年夏…
娘はカナダの大学に留学した
私たち夫婦は…
まだ離婚はしておらず、夫婦として娘を送り出した
離婚するタイミングがなかったわけではない。
けれど、夫も今さら急いでもしょうがないと思ったのだろうか。
離婚の話は棚上げされたままになっていた。
このまま行けば、娘が社会人になってからの離婚になりそうだな、と何となく思っていた。
が、私の思いをいつも覆してくれるのが夫だ。
年が明けて2020年に入った寒い冬の朝、夫から郵便が届いた
中には離婚届が入っていた…
同封されていた手紙には、
『……まずは自分の方から、自分の気持ちとして送らせていただきます。20年の間、本当にありがとうございました』
と他人行儀な言葉が綴られていた。
今さらショックなんてない…
と言ったらウソになるのかな?
懐かしい夫の筆跡
夫は字がとても綺麗だった。
新婚の頃は時々手紙を交換したね
いつも綺麗な字だなぁって思ってた。
久しぶりに見る直筆がこんな悲しい手紙だなんてね…
でも、私はすぐに気を取り戻した。
『離婚もいいかもね。
ひとりは寂しいけど、その代わりに自由があるよ』
娘がカナダに行ってしまい、寂しくて仕方がないかなと思っていたけれど、ひとりとワンコの生活に案外簡単に馴染んでしまった私
今の時代、海外にいる人とも簡単に連絡は取れるし、顔を見ながら電話することもできる
後から知ったことだが、夫は本当に毎日、娘に電話をしていたらしい
私と離れたくて家を出て行った夫だが、娘やワンコは恋しいようで、娘がいなくなってもワンコに会いにたまに家にやって来た。
もちろん、その頻度は出て行った当初よりもずっと少なくなっていたが。
こんなバラバラな家族がいてもいいんじゃないかな?
普段はバラバラでも、たまにみんなで集まって食事したり、うん、たまには旅行に行っちゃうなんてのもありかもしれない
いつかは娘も私の元を離れて行く。
そんな日を念頭におきながら、未来の私たち3人を想像してみたりした。
いつしか私は離婚に対して前向きな気持ちを持ち始めていた。
どうあがいても避けられない離婚なら、少しでもいいことを考えなきゃやってられないってのが本音かもしれないけれど…