頭の中の消ゴム

日々の生活の中で、この光景忘れたくないなと思うことはありませんか？

母親になるまでは、そんなことを思ったこともなかったけれど。。。

出産してまだ病院にいるとき、初めてのことだらけで、どれぐらいお乳を飲んだとか、どのくらい寝てくれたとか一喜一憂している横で、親や親戚の子育てのベテランさん達が口をそろえて「自分の時のこと覚えてないわ～」というのが不思議でなりませんでした。

こんなに嬉しかったり、思うようにいかなかったり、心配になったりいろんな感情を忘れるってどういうこと？って。


ところがお母さんになって、３ヶ月ぐらい経った時に、出産した頃の事を振り返ったら思い出せないことがすでにチラホラ。。。
「絶対に忘れない」って思ったことがたったの３ヶ月で思い出せないって、悔しいやら、情けないやら。

うれしかったということは覚えていても
どんな風に嬉しかったという実感がわかないんです。産後フラフラになったんだけど、どうフラフラだったか忘れるんですよね。

３ヶ月でこのことに気づいてから、忘れたくない光景を意識するようになりました。

キキが面白いことを言ったときには手帳にメモしていた時期もありました。

最近、私の胸に刺さるのは、キキが私に笑いかけてくれるときの顔

これはメモできないんだなぁ。
一生懸命胸にやきつけるんだけど、ちゃんと焼き付いているのか不安。

消えてしまったとき、消えてるから自分ではわからない。



私にはおばあちゃんが１人います。
もう９０才を過ぎて、今は施設で生活しています。
ずっと商売をしていて、とてもしっかりしているおばあちゃんで、孫にも厳しかった～。でも息子（私の父）には甘くて息子ってかわいいんだなぁと子供ながらに思ったものです。

このおばあちゃん、数年前から体は元気ですが、頭にだいぶ消ゴムがかかってきました。こないだのゴールデンウィークに私の両親が田舎に帰りおばあちゃんのところに行くと、息子の名前が出ません。
誰かわかってる？と聞かれると首を縦にふりながら、当たり前でしょうという顔をするけど、名前が出ない。母のことはわかる？と聞くと左右に並んでいる父と母を指で左右に指して、夫婦だろと言いたげなんだけど、夫婦という言葉も出ないし、母の名前ももちろん出ません。

その日はまだ調子がいい方で、私のいとこを前にして、息子に話しかけることも。
あなたの息子はとっくにハゲたじい様だよという世界ですが３０才そこそこのいとこを父と間違えるんですよね。


今がわからないおばあちゃんだけど、昔の子育ての楽しかったことや、嬉しかったことは覚えているのかなぁ。

その話を母から聞いて、とても切なくなりました。私には忘れたくない光景がたくさんあるから、どれも失いたくないのです。
例えキキが誰だかわからなくなってしまっても、「ママが大好き」と笑いかけてくれる今日の笑顔を忘れませんように。。。