「ジャズと映画とベースボール」80 日本シリーズ | JAZZ&Coffee kikiのブログ

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白球に目を凝らして勝負の行方に固唾をのむのはもちろんいいけど、ちょいと距離を取って見るとまさにいろいろな思いが交錯した舞台だったのが分かる。日本シリーズは阪神がオリックスを破り、38年ぶり2度目の日本一に輝いた。

時空を超える思いは指揮官にあった。岡田監督は1985年の中心選手で吉田監督を胴上げした。そして今年、当時、まだ生まれてもいなかった選手たちを率いて、今度は宙に舞う立場に回った。「選手として、監督として日本一になれたことは本当に幸せだと思う」。38年の時を経て、野球人として最高の思いがよみがえった。再びの、人生のハイライトだった。

一塁ベンチで試合の成り行きを見つめていた山本由伸投手はどんな思いだったろう。第6戦で完投勝利を挙げたが、3年連続で出場しながら、不思議なことにシリーズ初勝利だったという。もう日本でやり残したことはないかもしれない。日本一という有終の美は飾れなかったが、来季は新たな戦いの舞台をメジャーに求めて、未踏の地平を目指す。胸に去来するものは何か。

打率・483でMVPに輝いた近本光司外野手は一流への道を上り始め、充実感を手にした。春先のWBCで史上初の独立リーグ出身の日本代表投手となった湯浅京己投手は、6月から戦列を離脱していたが、シリーズで見事に復帰し、来季への希望を胸にした。ルーキー森下翔太はつかんだものの大きさをやがて実感する。

そして、胴上げでは「背番号24」がふんわり宙に浮いた。7月に脳腫瘍のため他界した横田慎太郎投手のユニホームだった。ナインの思いは天に届いたはずだ。

最終戦、ゲームセットの瞬間、京セラドーム大阪に集った選手、ファンの思いは弾けて、それぞれの感慨とともに宙に消えた。余韻を映し出すドームの照明灯が消されれば、それぞれが新たな道への歩みを始める。2023年のシーズンの幕は下ろされた。(11月7日)