高熱は急激に治癒力を上げる最強の反応

「瞑眩(メンゲン)せざれば病は癒えず」これは江戸時代の名医・後藤艮山が残した言葉であり、私の座右の銘の一つです。

一般に好転反応と呼ばれることの多い瞑眩は、血流が回復する際に生じる、毒だし反応を示します。体内にたまった毒が排泄される過程にでは、多かれ少なかれ発熱、湿疹などの不快な症状を伴います。しかし、そこを乗り越え、体が浄化されないと、持ち前の治癒力(免疫力)を発揮できません。瞑眩が起こらなければ、病気は治らないのです。

体は、毒出しを助ける治療を求めています。しかし、体に備わる治癒力を軽視してきた現代医学には、瞑眩という概念はありません。そこで、湿疹や発熱などの瞑眩を悪者として不要な治療をくり返し、逆に体の毒を増やして、治るはずの病気を治らなくしているわけです。

今、私たちに必要なのは、こうした過剰な医療からの自律です。生きる力がある限り、体は瞑眩を起こして治ろうとします。たとえ抗ガン剤で体が痛めつけられても、体は懸命に瞑眩を起こし、治ろうとするのです。

それを証明してくれたのが、発熱をくり返しながら、自らの力で治癒力を回復させたTさん(当時55歳・男性)でした。Tさんは大腸ガンが再発し、2012年1月に摘出手術を受けました。その際、肝転移が発覚し、3~10月にかけて、抗ガン剤治療を3クール受けています。

Tさんの記録によると、最初に38度を超える発熱が見られたのは、その3クール目の抗ガン剤投与が終了した4日後でした。それから1週間後、Tさんは帯状疱疹を発症(これも瞑眩です)。皮疹が生じた3日目の朝にも再度、38度を超える発熱が起こっています。

そして、11月15日に、今度は39度を超える発熱がありました。その発熱が治まり、21日にTさんは当院を受診されたのです。

この日、測定した血液検査の結果を見て、私は我が目を疑いました。3度目の発熱が起こる以前の11月8日には18%・1404個だったリンパ球が、たった2週間で35%・2555個に急増していたからです。(基準値は35~41%・1800~2500個)。高熱は、これほど急激に治癒力を回復させる力をもった、最強の瞑眩反応でもあるわけです。

危機的状況に陥ると単球を増やして防御

さらに、抗がん剤投与中のTさんの白血球データも、治癒力の仕組みを理解するうえで、大変興味深いものでした。

白血球は、主にリンパ球、顆粒球、単球(マクロファージ)で構成されています。ガン細胞の排除は、リンパ球の役割です。しかし、抗がん剤の毒を排泄できずに危機的状況に陥ると、体はリンパ球を犠牲にしてでも、毒の掃除屋となる単球をふやして、身を守ろうとするのです。

Tさんの場合、その現象が顕著だったのが3クール目の抗ガン剤治療の最中でした。その影響で白血球数が2500個にへると、3か月前は5%・310個だった単球が、30%・750個に急増(基準値は5%・250個以上)。一方、リンパ球は1116個から950個に減りました。

しかし、抗ガン剤の投与が終わると、Tさんの単球は徐々に減り、リンパ球が増加。その際、単球数は300個以上を維持することで、病気はよりよく治るようです。発熱でリンパ球が2500個を超えた時のTさんの単球も、365個と理想的な数値でした。

その後、Tさんは4クール目の抗ガン剤治療を中止し、気血免疫療法を行っています。治療後は足の冷えが取れ、全身が心地よく温まるそうです。ガンも治癒への道を歩み始めているのでしょう。

※この記事は福田先生が存命中に掲載された記事です。