「重要なのは、どう言うかより、何を言うかだ」
と語ったのは、デビッド・オグルビー。
私にとっては、この人をお手本に、
写経までした、20世紀を代表するクリエイターです。
一方、テクニックを駆使すれば掛け算のように人の心を動かせる、
お手のものだよ、といった今どきのメソッドは、どうも少しなじみにくいのです…。
ひとつ、事例をご紹介します。
アンディ・ウォホールの作品でも有名な、
当時、キャンベルスープの価格は通常のものより高め。
だから新しい広告キャンペーンも高所得者層に設定すべき、
という方針が出されたそうです。
でも、待てよ。ほんとうにそうなのだろうか。
高所得者層で間違いないか。
その仮説が正しいか、
Goサインを出してもよいものか、
迷ったチームは、ある有名な調査に着手します。
「空き缶調査」です。
高所得者層と抵所得者層の住むエリアから、
どちらのごみ箱からキャンベルスープが多く見つかるか。
そして、結果は、低所得者層の住むエリアから空き缶が多く見つかりました。
なぜか。
低所得者層の女性は仕事があって、働いていて、忙しい。
だから、値段は多少はっても、
料理に時間のかからないキャンベルを支持していたことが判った-。
こうした知見、コンセプトが見つかったら、
テクニック、どう言うかは二の次ですね。
「働いていても、子どもたちのために栄養たっぷりの、
あたたかいスープをすぐに提供できる唯一の存在、それがキャンベルスープ」
その強みを素直にまっすぐ伝えていく。
それがオグルビーのいう、何を言うかだと思う。
キューピーマヨネーズがかつて行った「SPEED 」キャンペーンも、
・お惣菜ではなく手作りのものを食べさせたい
・でも仕事があって時間がない
・それができる存在は、サラダだ。だから、マヨネーズ。
という、働く女性に対するまなざし、優しさから生まれた同質のコンセプト。
小手先ではなく、
時にはごみ箱をあさっても、消費者の気持ちをスッとすくいあげる。
その中に、言うべき「何か」を見つけること。
流行りのテクニックに頼る、その前に。
追伸:
本日、19日は、熟カレー(江崎グリコ)の日 だそうです。
19で、じゅうくで、熟。こじつけながらも、
こんなのも刺激を喚起する、簡単な仕掛けづくりですね。