法定消防設備点検において、製造後5年を超える蓄圧式消火器が対象になる機能点検について、点検業者の間にフェイク情報が広まっている。
 その結果として法定点検が放置され、それを知らずに管理権原者(施設の管理者)や防火管理者(設備の管理担当者)が法令違反をしていたり、施設の利用者の安全が損なわれていたりしている。

 「ダイジェスト」も長くなったので当ブログで書いてきたことを、ここにまとめておく。

・フェイク1
 加圧式消火器の破裂事故を防止するために機能点検が追加された。蓄圧式消火器は破裂事故が発生しないから、機能点検は不要である。

・真実
 蓄圧式消火器においても、破裂事故は発生している。また、内部及び機能点検の点検項目9項目の内、破裂事故に関連する点検項目は1項目のみである。機能点検の主たる目的は破裂事故の防止ではなく、消火器が正常に使用可能か確認することである。消防庁の報道資料からも確認できる。


・フェイク2
 蓄圧式消火器は機能点検ができない。

・真実
 点検は容易に可能であるが、再充填に手間がかかる。業者は手間がかかる点検をしたくないからか「できない」と説明している。点検した消火器は廃棄し、新品を補充する方法が効率的な手順となる。また、5年で消火器を交換する方法もある。


・フェイク3
 蓄圧式消火器は圧力計が付いていて、外観で使用可能か判別できるため、機能点検は不要である。

・真実
 外観で全ての内部の故障を判別するのは不可能である。例えば圧力計が故障していた場合、消火器が使用可能か判別不能である。機能点検のときに圧力計が故障しているか判別するために、ガスを抜いて針が動くか点検する制度になっている。


・フェイク4
 消火器は設計標準使用期限が10年であるから、機能点検は不要である。

・真実
 設計標準使用期限は、法定点検を実施し傷んだ部品を交換すれば10年使用可能という意味である。法定点検には当然、内部及び機能点検が含まれる。ちなみに法定点検の対象となっていない住宅用蓄圧式消火器(構造が同じ)の使用期限は5年である。


・フェイク5
 機能点検をして再組立した消火器と、していない消火器の判別はできない。

・真実
 何の痕跡も残さず、分解後の再組立は不可能である。自分で判別できなくても、メーカーに調査依頼をすれば判別可能である。


・フェイク5
 蓄圧式消火器の内部及び機能点検は、どの業者もやっていない。

・真実
 点検をしていない業者が、自らを正当化するために「どの業者もやっていない」と説明しているだけである。


・フェイク6
 消防庁が作った点検制度に問題がある。

・真実
 消防庁が作った点検制度は、設備の分野で一般的に行われている点検方法が書かれているだけである。消火器は設備の中では圧力容器に分類される。容器の内部を点検する、耐圧試験を実施するというのは圧力容器の検査方法、点検方法として、厚生労働省経済産業省の法規制にも存在し、実際に行われている。


 法定点検はどの業者に依頼しても内容が同じになるので、厳しい価格競争になる。儲からない仕事に、手間のかかる点検はしたくないという業者の都合が見えてくる。

 「蓄圧式消火器は外観点検のみで10年使用可能です」と説明する業者がいたら、その業者はまともな設備の知識を持っていないことが、消火器に使用されている部品からわかる。
 すなわち、
 ・10年間1度も動かしていない圧力計を正確と信じる
 ・10年間、パッキン、Oリングなどのゴム製品が経年劣化による機能低下が起きないと信じる
ことである。
 まともな業者であれば「とても10年なんてお勧めできません」と説明するはずである。

 防火管理者や設備の管理担当者としては、フェイクを信じたおかしな業者のおかしな説明に乗っかって安全に関わる法定点検を放置し(ブラック認定される)、社会人としての信用を失わないようにしたいものである。
 おかしな業者がおかしな説明を始めたら、「ヨソに頼むから、帰れ。もう来るな」と言えるようにならないといけない。


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