2週間前、熊本市議の女性議員が、生後7か月の子どもを同伴して会議に出席した。

議会は前代未聞の事態に混乱した挙句、彼女を議場から追い出し処分を検討している。

 

彼女は42歳で、アメリカの大学院を出た後に国連開発計画(UNDP)で働いていた。

子どもを連れて来た理由は、日本の女性が抱える育児と仕事の両立の困難さを訴えるためだったという。

1年前から議会に託児所の設置を依頼していたものの、「個人の問題だから」とすべて断られた。

 

これに対する日本の意見は様々である。勇敢だとする人もいれば、自分勝手な行為だ、

ベビーシッターを雇えば済む話だ、という人もいる。

これらは間違ってはいないが、論点はずれている。

ここでするべきなのは、彼女が訴えたかった日本の女性の現状を改善することであって、

彼女個人を批判することではない。それでは何も意味がない。

 

そもそも日本の男女格差は深刻である。

 

世界における男女格差ランキングは世界144国中113位である(2017, WEF)。

1~3位は北欧諸国

4位ルワンダ

11位フランス

49位アメリカ

100位中国 となっている。日本は先進国の中でダントツの最下位である。

 

国際男女格差レポートとは、今年11月に世界経済フォーラム(WEF)が発表したものであり

・経済-活動への参加と機会

・教育-初等~高等教育を受けていること

・政治権限-意思決定構造への参加

・健康-生存率や、平均寿命と性比

の4つの項目で男女差を比較し、その差が小さい国が高ポイントになる。

 

日本は健康、教育の面では好成績でありながら、

経済活動への参加と、政治権限の項目が大きく足を引っ張っている。

 

経済活動については、給与の男女差や参加度、及び指導的地位が重要になる。

ここで各国における管理職の女性比率について調べると、(ILOのデータ)

1位ジャマイカ(59.3%)

2位コロンビア(53.1%)

15位アメリカ(47.6%)

24位フランス(39.4)

55位ドイツ(30.3)

96位日本(11.1)(108国中!)

 

また、政治活動への参加について、国会議員における女性比率を調べると(IPU, 2015)

1位ルワンダ(57.5%)

2位ボリビア(51.8)

6位スウェーデン(43.6)

33位チュニジア(31.3)

49位イラク(26.5)

53位フランス、アルジェリア(25.7)

60位アフガニスタン(24.8)

65位中国(23.6)

66位イギリス(23.5)

89位サウジアラビア(19.9)

95位アメリカ(19.5)

115位北朝鮮(16.4)

115位韓国(16.3)

147位日本(11.6) (186国中!)

 

なんと、女性が抑圧されているイメージを持たれている中東に、日本より女性議員が多い国がたくさんある。

また、1位のルワンダなどアフリカ諸国を始め、世界100国で「クオーター制」といって、憲法か法律で女性議員を一定割合採用することが義務づけられている。ちなみに日本ではそのような法はなく、みんなの党が自主的に採用しているだけである。

 

また、11位に躍進したフランスだが、2000年に制定されたパリテ法(候補者男女同数法)が成果を上げている。

 

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現在日本は少子化や労働力不足に苦しんでいるが、それを解決するのは女性である。

ゴールドマンサックスによると、現在の雇用格差が解消されれば820万人の労働者が増え、GDPも15%増えるとされる。

また、女性が育児をしやすい環境を整えれば、出生率も上がるだろう。

 

そのため、政府は女性の活躍推進を公約に掲げ、子なし世帯への増税案を検討し、「4人以上産んだら表彰する」なんて発言するほど焦っているのだが、これらは単に女性に「働け」「産め」と圧力をかけるだけであって、根本的な解決に向けた具体案ではない。

 

冒頭の熊本議員に向けられた数々の批判は、今の日本で少子化が進む理由を表している。

子育ては個人で解決しろと押し付けられ、それが女性の負担になっている。

 

「もし議会に託児所をつくっても当面彼女しか使う人がいない、金の無駄だ。自分のための利益だろう」という批判をする人は、

「車いす専用トイレなんて、障害者しか使う人がいないから金の無駄だ。」ともいえるだろうか?

 

社会に関わるための機会を逃している人には、率先して解決するのが政治家の仕事ではないのだろうか。

 

「託児所なんて彼女しか使わないんだから」というけど、どうしてもし託児所が出来れば、子育てする男女にとって働きやすい職場として社会のモデルとなるとともに、今後女性議員も増えると楽観的に考えられないのだろうか。

 

 

私の友達でフランスに留学している、とても優秀な女友達は、こういった日本の古い体質が嫌いで、「日本に帰ったら女性が活躍できないから、絶対に日本なんかで働きたくない」と断言していた。

このままだと優秀な女性は日本を避けて外国に行ってしまわないだろうか。

 

この件をきっかけに、子育ては個人じゃなくて社会がするものだ、それが社会のためになるのだ、ということを国民も政府も気づいて行動することを望んでいる。

 

 

おわり