料理がおいしい!と思うときって、どんな時だろうか。

 

気心知れた人と食べているとき?

ちょうどいい塩梅の味付けや火の通り方?

好きな食材がたくさん?

洗練された空間で、丁寧な接客で出てくる?

きっとどれもおいしい!に繋がるだろう。

 

では、「想像力」はどうだろうか。

 

どこの国や地域で親しまれる料理で、

日頃はどのように食されているのか。

 

この食材はどんな環境で育ち、

どのようにして捕獲され、

どんな場所でどんな丹念な下処理を施され

この場にたどり着いたのか。

皿に乗るまでに、どのような工夫でもって調理され

自分の目の前にたどり着いたのか。

 

過程が想像できればできるほど、料理への期待感が増したり、希少性を感じて感激したり、食材や労力を惜しまず関わった人たちへの感謝の気持ちが生まれたりする。

もちろん、目の前にお皿が来てからこんなに詳細に説明されれば料理は冷めてしまう。どうしたって私は、料理が持っている情報量のほんの一部しか知らないのだろう。

 

 

説明されれば分かる。

説明されなければ分からない。

ある意味で「想像力の欠如」なのかもしれない。

野暮なのかもしれない。

 

 

ただ残念ながら私の想像力はそう豊かではなくて、少しでも説明があると光景が広がるきっかけになり、一層料理がおいしくありがたく感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンス ダンス ダンスールは、私にとっては丁寧な料理の説明みたいなものだ。

 

最近の私は毎日この漫画に泣かされている。
バレエを題材にした少年マンガ。
既刊27巻、現在も連載中。
 
何が楽しいかって、バレエ歴わずか2年の主人公の快進撃が気持ちいい…とかではない。
主人公含め、優秀なバレエダンサー達が役を降ろす過程を描く情報量が恐ろしく多いのだ。
 
役になりきる、ではなく、役を降ろす。
役の抱える時代背景、立場、人間関係、感情の移り変わりといった「生涯」を表現するために、自分の体験と役をリンクさせながら、実感を持った解釈・表現でもって役として踊れるようになっていく。
それが主人公はじめ、登場する若きバレエダンサーの成長過程であったりもする。
 
だからバレエの知識がゼロに等しい私でも、役の生涯に心を打たれて堪らなくなり、主人公たちの心が揺さぶられる様に共感して、のめり込んでしまう。
故にウェブで毎日数話ずつ、細切れで読んでいても、毎度胸を鷲掴みにされたり、愛でもって頬をひっぱたかれたりする思いで読んでしまうのだ。
 
主人公は「これぞ」という瞬間を体験すると、「光が爆ぜる」と表現する。
私の目の前までチカチカするようになってしまった。ダンスって、芸術って、こんなにも愛して良いものなんだ。
 
 
毎年クリスマスシーズンに引っ張り出される秘蔵っ子。

 
 
 
 
 
 
作中でこれだけ役について、そして作品について語られれば、もちろんバレエの舞台だって楽しめるに違いない。
 
あぁ、来年は生の舞台を見に行きたい…!
 
何の脈絡もなく私は口走り、それを聞いた夫はぽかんとしていた。

やだなぁ、「食べるために釣りたい!」って熱心に生態から活け〆の方法まで何もかも情報を求めるようなあなたなら、きっと分かるはずでしょ。