「決勝おめでとう。で、一人で来るなんてどうした」
「ありがとうございます。実は、千歌ちゃんのことで」
再びアキバドームに行けることになったけど、千歌ちゃんはスランプになった。決勝で歌うための新曲の詞が上がってこない。
私はもちろん、曜ちゃんにも手の施しようがないほどだった。まあ、私に原因のいったんはあるんだけど。どうしようもなくて、先輩に会いに、島に渡った。
「東京戻るんだって」
「はい。音楽大学も決まりましたし」
「まあ、梨子ちゃんはあっちの人だもんね。せいぜい、頑張んなよ」
「それで…」
「千歌なら大丈夫だよ。梨子ちゃんとの別れを前向きにとらえた歌にしてくるから」
「私のことを」
考えてみれば去年もそうだった。
うちらは決勝を決めたけど、廃校が覆えることがなかった。そんななか、青い海にとび出そうとうたったあの曲。
「あの曲の詞って、果南さんですよね」
「ヒント出しただけだよ」
「『ずっとここにいたいね』ってとこですよね」
学校がなくなる。三年生もいなくなる。どうしたらいいか、わからなかった。
「鞠莉もダイヤも将来のこと考えてる。私は、お店を継ぐことだけだったし」
「それって、十分将来のことじゃないですか」
「ううん。お店を継いだとして、何を目指すかがわからなかった。ここでみんなとずっと過ごせればいいという感じだけだった」
「ダイビングのライセンスとかは」
「最初は、鞠莉やダイヤがいない内浦に残りたくない、だったんだよ。それ言ったら、千歌に叱られたし」
「千歌ちゃんに叱られたんですか」
「そう。戻ってきて次も輝くためにライセンスとりに行くんじゃないですか、ってね」
私も、ここで、海の音を聞いたから、ピアノをまた弾けるようなった。次も輝くために今がある。
「桜って、一年中咲いてたら、なんて考えたことない」
「一年中はちょっと」
「そうだよね。散るかもしれないけど、香りは残るし、思い出も残るよね。でも、懐かしむだけじゃなく、次へのステップにしなきゃ」
二人して眺めた海の先には、懐かしい校舎が見えた。そこは、もう学生でにぎわうことはない。
「ユメは消えないんだよ」
「はい。なんか私も元気もらえた気がします」
「たぶん、千歌も同じこと考えてると思うよ」
やっぱり、この人がいるから千歌ちゃんはリーダーでいれたんだ、と思った。
「今度の曲、和風にしたいと思うんです。花火の曲は琴でしたけど、いっそ三味線とか」
「梨子ちゃん。それ、いい」
いつの間にかリーダーが近づいてきてた。一枚の紙をひらひらさせて。
