『眠られぬ夜のために①』九月五日: | 真田清秋のブログ

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 『法そのものは、今も昔も、真実と偽りの奇妙な混じり物である。そこで、裁判の時に特に大切なのは、できるだけその真実の部分のみを生かして用いる事である。「神は人間を単純なものに造られた。ところが人間はいろんな術策を弄(ろう)したがる。」

 何故だろうか。一つには、神が望まれる単純な生き方は、私的関係でも国家的関係でも、彼らには簡単すぎるからであり、また一つには、エゴイズムが常に真理を妨げるからである。とりわけ、神の単純な真理に奉仕するよりも、習い覚えた術作の方が、他人に抜きん出ることも、幅を効かせることもできるからである。

 こうした真実の法的関係の周りに、時には数世紀の長きにわたって、伝来の虚偽もしくは半真理の一種の気層圏といったものが発生し、健全な法感情の抗議にも関わらず、法律と裁判とによって作為的に温存されてきた。そして僅かに、時々、並外れた強力な人間が現れ、神の命を受けて、この気層圏を打ち破り、再び真理のために門を開くことになる。

 ダンテ『神曲』地獄篇第九歌五五ー一〇五行。』

 

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