「売れる仕組みづくり」を伝えるコンサルタントのブログ

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「売るだけの経営者」から「売れる仕組みを創り出す経営者」へパワーアップしたい経営者を応援するブログ

[要旨]

ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんによれば、ブランディングは短期的なマーケティング施策ではなく、長期的な視点に立った未来への投資と考えなければならないそうです。そこで、ブランディングを成功させるためには、労力と時間を要するという前提で取り組む必要があります。


[本文]

ブランディングコンサルタントの渡部直樹さんのご著書、「愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング」を拝読しました。同書で、渡部さんは、ブランディングは中小企業であっても重要であるものの、それを確立するにはある程度の労力が必要ということを述べておられます。「(中小企業が)ブランドイメージやブランドポジションを確立するには、時間と手間、そしてコストがかかってきます。ブランディングは短期的なマーケティング施策ではなく、未来への投資です。

故に、その予算取りをどのように捉えるかが(中略)、中小企業にとって大きな課題と言えるでしょう。これは、イベントだけでなく、ブランディングの専任者を置く際にも、人件費という観点から同じことが言えます。そのためには、売上などの定量的な成果だけでなく、対外的なブランドイメージや社員のモチベーションアップなど、定性的な成果も合わせ見て、総合的な効果を考えることが必要です。

ブランディングの予算配分は、中小企業における悩みのタネですが、自社が掲げるミッションや経営理念を実現するには、未来への投資は欠かせません。とは言え、短期的な成果への投資も同じくらい大切なので、どちらかに偏り過ぎないよう、バランスを取りながら考えていくことが、ブランドの持続的な成長につながるのではないでしょうか」(42ページ)

この渡部さんのご指摘は、多くの方がご理解されると思います。また、このような考え方は、ブランディングの確立に限らず、組織開発、人材開発、情報化武装、マーケティングなどにもあてはまります。ところが、私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、中小企業経営者の方の多くは、直接部門以外には、あまり、人員を充てようとはしないということです。それは、人件費を抑えるためには、間接部門の人員を増やしたくないという考えによるものだと思います。

そして、間接部門は、外注したり、パート従業員に担当させたり、直接部門の従業員に兼任させたりすることで、あまり経費を増やさないようにするなどの対応を行います。このような考え方は、かつては、うまくいっていたと思います。しかし、私は、現在は、間接部門にあまり注力しないという対応は、うまくいかないと思っています。なぜなら、現在は、多くの会社が品質の高い製品を製造したり、商品を販売したりしているので、製品や商品そのものでの差別化ができなくなりつつあるからです。

ブランディングは、まさに、顧客体験価値など、製品や商品そのものではなく、それを入手することで得られるメリットを高める活動です。ところが、そのような活動に注力しなければ、ブランディングは成功しないということは、渡部さんのご指摘の通りです。したがって、ブランディングで成功したいと考える経営者の方は、直接部門と同様かそれ以上にブランディングのために経営資源を注ぐと考えなければならないと、私は考えています。


2024/6/27 No.2752





[要旨]

財務省が公表している日本政府の貸借対照表によれば、日本政府の借金は1,000兆円あることがわかります。しかし、資産は672兆万円、負債は1,193兆円なので、資産・負債差額は▲521兆円になり、さらに、日本銀行の貸借対照表と連結すれば、▲120兆円にまで縮小します。このように、会計の数値は、その数値だけを見るのではなく、全体を見て判断しなければ、正しい理解はできません。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、フジテレビを傘下に持つ持株会社のフジ・メディア・ホールディングスの2017年3月期の貸借対照表によれば、同社の資産は1兆円、不動産が3,700億円、投資有価証券は3,000億円あり、放送会社でありながら、不動産事業の割合が本業に匹敵するくらい大きくなっているということが読み取れるということについて書きました。

これに続いて、高橋さんは、政府の貸借対照表について述べておられます。「実際に政府のBSを見てみよう・以下に挙げる数字は、すべて財務省が作成した『平成27年度国の財務諸表』で公表されているBS(平成29年3月30日報道発表)のものである。細かい項目が並んでいるが、素人すべてを理解しようとしても、歯が立たないし、あまり意味がない。

ここは、有価証券報告書を見る鉄則と同じ、『際立った数字を読んで、わかればいい』のだ。では、負債の部で際立った数字はどれかというと、『公債』だ。(中略)『公債』は、917兆4,734億7,000万円だ。これが、世に悪名高い『借金1,000兆円』の主役である。恐らく、(公債が書かれている項目より)1つ上の『政府短期証券86兆3,823億900万円』も合わせて1,000兆円と騒いでいるのだろう。

ついでに言うと、『政府短期証券86兆3,823億900万円』(償還期間の短い国債=短期国債)と、『借入金29兆8,821億3,000万円』も足した1,000兆円ちょっとが、日本政府の借金だ。しかし、会計的な見方を身につけてきた読者なら、もう、わかるだろう。借金の額だけを見て批判するのは、的外れだ。重要なのは、負債の総額ではなく、『資産と負債のバランス』である。

ということで『資産合計』を見ると、672兆3,599億7,000万円とあり、『負債合計』を見ると、1,193兆1,636億7,300万円とある。さらに、『資産合計』から『負債合計』を引いた額も、自分で計算するまでもなく、BSに書いてある。それなら、最初から『資産・負債差額』だけ見ればいいと思ったかもしれないが、際立って数字の高い勘定項目を確認するクセは、つけておいた方がいい。

現に、『負債の部』を見たからこそ、『政府の負債の大半は国債』と確認することもできたのだ。では、改めて、日本政府の『資産・負債差額』はどうなっているかというと、▲520兆8,037億6,600万円だ。『日本政府の借金は1,000兆円』と批判している人たちは、この差し引き数字が見えていない。それをいうなら、『日本政府の純資産は、約▲521兆円』である」(194ページ)

この後、高橋さんは、日本政府の貸借対照表と日本銀行の貸借対照表を連結させると、「日本政府の純資産は、約▲120兆円」になると説明しています。ところで、「政府の借金1,000兆円」についてですが、単に、この数字だけを見れば、多くの人は、「政府は多額の借金を抱えて大丈夫なのか」と感じてしまうと思います。

しかし、純資産は▲521兆円であり、さらに、政府と一体である日本銀行との試算を合わせれば、それはさらに▲120兆円にまで縮小します。すなわち、財務分析では、1つの数字だけを見ていては、その会社(組織)の財政状況を正しく把握できないのです。ところが、いまだに、一部の「知識人」によって、「政府は財政破綻する」とか、「日本国債は暴落する」といった主張が行われていることは、私はとても不思議に感じています。

それも、単に、私と意見が違うということではなく、会計的な視点からの説明が行われず、「借金が1,000兆円もある」ということだけが主張されているだけです。そうであれば、財政破綻や国債暴落は、非論理的な主張でしかありません。これに対して、「日本政府と日本銀行を連結した貸借対照表でも、純資産は▲120兆円もある」とお考えの方も多いと思います。しかし、私は、日本政府は、実質的に資産超過であると考えています。

なぜなら、日本の国債の金利が低いからです。いま、日本の金利は上昇したとはいえ、10年国債の利率は0.8%です。一般の会社が、債務超過の状態であれば、どんなに金利を高くしても、融資を受けることはできません。なぜなら、負債が資産を上回っている状態なので、融資を返済できる能力がないと判断されるからです。

でも、日本政府は、たった0.8%でお金を借りることができるというのは、確実に返済してもらえるからと考えられているからです。すなわち、貸借対照表は、表向きは債務超過でも、実態は資産超過であると考えられているということです。したがって、「日本の国債は暴落する」と主張する人は、なぜ、金利が0.8%と、極めて低いのかを説明しなければなりませんが、私は、その理由をきいたことはありません。

とはいえ、この記事の本旨は、日本政府の財政が危ないかどうかではなく、きちんと財務情報を読むことができるかということです。すなわち、「日本政府の借金は1,000兆円」ということは事実であるとしても、ビジネスパーソンとしては、単に、「それはとても大きな金額だから、日本政府は危ない」と理解することは避けなければいけません。


2024/6/26 No.2751