東京に拠点を移し、数日が経った。

 

初日からまだ一度もボーズは無いが、京都の市場とは明らか”何か”が違った。

 

まず商品も東と西ではサービス内容や料金携帯、解約違約金などの契約条件が異なった。

 

キャリアは同じなのに、だ。

 

東京組は両国にある部長のマンションを拠点にしていたが、集まるのは週に一度くらいで、ほとんどは直行直帰。

 

契約書はファックスを本社に送り、登録処理を進めてもらう流れだった。

 

そして三人が三人とも担当エリアは別々。

 

俺は千葉県内の市川市を担当していた。

 

東西線の行徳駅周辺を歩いて回っていた。

 

市川市は主にブルーカラーの街だが、東西線が通っている為東京都内に通勤するホワイトカラーの単身層も少なからずいた。

 

俺のターゲットは専ら彼らだった。

 

彼らは平日の午前は在宅率は極端に低く、その為営業時間内に”出会う事”にも一苦労した。

 

持ち前の根気で、足が棒になり履歴シートがレ点で真っ黒になるくらい何度も何度も

同じマンションを訪問した。

 

1時間ごとに、出入りが頻繁になると予想される時間帯であれば30分毎に訪問した。

 

その甲斐があって、何とかコンスタントに数字を上げてはいたが、

 

京都の時みたいな爆発的な数字は作れずにいた。

 

俺以外の二人も同様で、なかなか在宅率が悪いという。

 

そうはいっても、訪問し尽くしていないリストを変えるのはタブー。

 

いくら訪問エリアが塩っ辛ろうが結果を出すまで一つの場所を攻め抜く以外選択肢はない。

 

まさに一所懸命。

 

そして、孤独との戦い。

 

京都なら昼休憩に仲間とコンビニで屯ろしながら缶コーヒーでも飲みながらリフレッシュの雑談ができた。

 

だが、ここ(東京エリア)にはそれがない。

 

だが、拠点立ち上げの不沈が掛かっている以上、精神的に遅れを取る訳にはいかない。

 

まさに、日々精神を削られる戦いだった。

 

続く。