翌日の土曜日にM歯科に行った。

診察券を見せて、母がどういう状態だったか教えて欲しいとお願いした。

程なくして、母を見てくれた若い女医さんが、治療用の椅子に案内してくれた。

そこには、カラー写真とレントゲン写真がデジタル表示されていた。

「お母さんは、歯が痛いと言ってお越しになりました。この写真の通り、先週の水曜日の時点では、歯茎などは然程腫れてませんでした。

右下奥歯の虫歯を埋めて、治療方針を話しました。

左上奥歯も抜けており、両奥歯共、噛めない状態でした。ブリッジが無理なので、入れ歯を作る案をお話ししたら、お任せすると仰ってました。

薬に関しては、服用中の薬があるが、お薬手帳をお持ちでなかったので、無闇に処方を避けて、主治医にダメな薬などを聞いて、次回お薬手帳を持って来る様にお願いしました。」

「母は、痛がってませんでしたか?」

「我慢されてたのか、大丈夫と言ってました。」

お礼を言うと、見送ってくれた。診察料は受け取らなかった。


先週の水曜日の時点では、歯茎の腫れは然程無く、我慢出来る程度だったのだろう。

土曜日には、かなり腫れていたから、金曜日あたりから腫れ出したのか?


その夜は、あまり眠れなかった。

翌日は、初めての喪主として通夜があるせいだけでなはなかった。

もしも、金曜日から腫れていたのなら、書道教室が金曜日にあったので、姉が母の顔を見てれば、右顎の腫れに直ぐに気づいたはずだ。

更に母が痛がっていれば、土曜日の午前中にでも歯医者に連れて行った筈だ。

でも、そうなって無いのは、よく母が嘆いていた。「○ちゃんは、書道教室が終わって、1階リビングに居る私の顔も見ずに、玄関で、じゃね、ってだけ言って、帰っちゃうのよ。毎日誰とも話さず寂しい思いをしてるのに、こんなに近くに住む娘が居るのに、居ないのと同じ。もう、居ないものと思うしかないわね。」って。


2人の間に何があったのか?全く分からない。

姉は、僕が母の通帳を管理(勿論、母に頼まれて)しているのが、気に食わず、母が姉に「一緒に暮らしてってお願いしたら、通帳を僕から取り上げて、姉に預けるなら、一緒に住んであげると言ったらしい。


総合すると、姉は先週の金曜日も、母の顔を見て無いのではないか?いつもの様に、玄関で、じゃね、だけ言って。

母がどんな状態で、何に困っているか?心配もしてなかったのではないか?


母の近くに住んでるってだけで、母の面倒は見ないで、実家の財産は自分の物と勘違いしているのだろう。不憫でならない。


明日の通夜が終わったら、叔母、叔父、姉を集めて、淡々と報告しようと考えていた。

眠れるわけがない。。。


続く