以下の障害について、症状・原因・治療 に分けて、ご説明します。

①腰椎分離症・すべり症
②骨盤裂離骨折
③腰痛
④ヴァンネック病
⑤ペルテス病 
⑥股関節裂離骨折・骨端炎
⑦恥骨結合炎
⑧鼠径ヘルニア
⑨内転筋腱炎
⑨腸腰筋腱炎
⑩大転子滑液包炎
⑪弾発股症候群
⑫ヒップポインター

①腰椎分離症・すべり症   

【症状】:腰のスポーツ障害の約25%を占める。そのうち、90%近くが第5腰椎に発生。

腰痛はあるものの(腰を反らすと痛みが出たり、運動後に軽く痛むもの、歩行が困難になるものまで様々)、持続的ではない。レントゲンを見ると、腰椎の一部が分離しているのが確認できる。症状が進むと、腰椎が前へずれて、「すべり症」となる。

【原因】:繰り返しの腰を捻る動作(投球、バッティング、キック、シュートなど)による、疲労骨折。

特に、成長期の子どもは、”下半身を使って腰を捻る” という動作が上手くできず、上半身だけの力で捻るため、ある特定の部位にストレスをかけてしまう。

【治療】:早期発見、早期治療(コルセット装着)で完治が可能。

「腰が痛い」 と子どもが訴えたら、まずは整形外科を受診させましょう。そして、下半身の柔軟性を高めるストレッチを行ったり、腰の正しい捻り方を習得させるのは、予防につながります。

②骨盤裂離骨折   

【症状】:骨盤に付着している筋肉が、はがれる。

スポーツ活動中に、突然 "バチッ" という痛みが股関節周辺に走って歩けなくなったり、突発的な痛みはなくても股関節に圧痛(押すと痛い)があったり、股関節を伸ばすを痛い、などの症状がある。

【原因】:成長期の子どもは、筋肉の付着部が弱く、急な筋肉の動きによって、その部分が剥がれてしまう。

【治療】:股関節に痛みがあれば、まずは医療機関へ。 その後安静にし、痛みと付着部の経過をみながら、慎重に復帰プランをたてていく必要があります。

③腰痛   

【症状】:腰部周辺の鈍痛。重い感じ。

【原因】:腰痛の原因は様々ですが、下半身の柔軟性が乏しいジュニア期の子供達は、太ももの筋肉が緊張していて、骨盤のバランスが崩れるのが原因では・・・と言われています。

【治療】:痛みがあったら、先ずは医療機関へ行き、腰痛以外の障害がないか確認しましょう。その後は、運動参加可能かどうか、制限があるのか、などを確認してゆっくり復帰させましょう。

対処療法として湿布などを貼っても良いでしょうが、効果は一時的で、根本的な解決策ではありません。運動前後のストレッチを十分にすることは、腰痛だけでなく全てのスポーツ障害予防になりますから、きちんと行うようにしましょう。

④ヴァンネック病   

【症状】:運動時における、お尻周辺の痛み。

【原因】:動きによって、恥骨と坐骨の間に一定のストレスがかかり、炎症や疲労骨折が起こる。

【治療】:医療機関を受診後、安静に。運動への復帰は医師の許可がでてから。

⑤ペルテス病   

【症状】:5歳~10歳の男の子に多い、股関節周辺の痛み。 しかし、子どもによっては膝の周辺や太もも周辺を痛がることも。 大腿骨頭(太ももの骨の先端)の骨端症で、軟骨の一部が壊死してしまう。

【原因】:大腿骨頭に、何らかの理由で血流がいかなくなり、壊死にいたる。

【治療】:早期発見、早期治療で完治が可能。壊死してしまった骨は、やがて吸収されて新しい骨が作られる。

⑥骨盤裂離骨折・骨端炎

●骨盤裂離骨折・・・突発的なストレス(ボールを思いっきり蹴る、ジャンプ、ダッシュ、ターンなど)で、骨盤についている筋肉の付着部がブチっと剥がれてしまう。 

●骨端炎・・・繰り返しのストレスが原因で、骨の端に炎症が生じる。

良く起こる代表的な部位は…。
1)上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)ー縫工筋の付着部
・・・骨盤の上部から、脛骨(下腿の太い骨)に伸びた長い筋肉の縫工筋(太ももの前を斜めに走る筋肉)の骨端で起きる。手で触ると、横腹前面、ちょうど骨盤の骨のすぐ下。

ジャンプ系のスポーツ、バスケ、バレー、ダンス、などの選手によく起こります。

2)下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく)-大腿直筋の付着部
・・・骨盤の真ん中くらいから、膝下まで伸びた太ももの筋肉の骨端で起きる。足の付け根のちょっと上から始まっていますが、かなり奥なので、皮膚の上から触ることはできません。

キック系のスポーツ、サッカーの選手に多発する傾向があります。股関節を伸ばすと痛いので、曲げた状態で安静にします。

3)坐骨結節 - ハムストリングの付着部
・・・ももうらの筋肉の付着部。この部位は治りにくく、治っても再発することが多いので、スポーツへの復帰は慎重に行います。 ダンスやハードルなど、膝を伸ばした状態で前方に飛ぶようなスポーツで起こりやすいです。

坐骨はちょうどお尻の下にあたるので、痛みが強いと椅子に座れなくなることもあります。

4)大腿骨上部 - 腸腰筋の付着部
・・・腹部から大腿骨に伸びる筋肉の付着部。股関節を繰り返し曲げる動作が多いスポーツ、サッカーはもちろん、長距離選手、体操選手などに頻発する傾向アリ。太ももの前に痛みがでます。

突発的なストレスで筋肉の付着部が骨から剥がれてしまう骨折では、その瞬間は激痛で、歩くのも難しくなります。

繰り返しのストレスによる骨端炎では、多くのスポーツ障害のように鈍い痛みがあったり、痛くなったりならなかったり、を繰り返し、放っておくと思いっきり動けなくなります。

骨折や骨端炎、どちらにしてもしばらく安静にして医師の指示の元、適切なリハビリを行えば、スポーツに復帰できます。

といっても、骨折の場合は1~2週間で復帰できるものではなく、1ヶ月~2ヶ月(もしくは3ヶ月)くらいは、癒着のためにしっかりとした経過観察が必要です。

現場での対処としては、RICEが基本。その後受診を。

その後は、医師の指示に従いながら計画的なアスレティックリハビリテーションを行うことが必須です。

予防は、繰り返しますが運動前後の適切なウォームアップとクールダウン、です!

⑦恥骨結合炎 

 

骨盤は左右の骨がペアになっているもの、です。私はよくハートの形をイメージします。そうすると分かりやすいのではないでしょうか?

後ろは背骨の下の仙骨部分にくっついていて、前はちょうど股間のあたりで結合しています。この結合部分に炎症が起きてしまっているのが、この恥骨結合炎、です。

急な痛みがくることはまれで、徐々に痛みが増していきます。痛みは主に、下腹部、もしくは太ももの内側上部、人によっては股間(鼠径部)に痛みを感じることもあります。

⑧鼠径ヘルニア

 

女子より男子の方が発生率が高い、です。下腹部から股間にかけて痛みがでます。

また、トイレの時や鼻をかむ、くしゃみをする、などして下腹に力が入った時に痛みがでることもあります。

あきらかなヘルニアが認められた場合、手術となることがあります。

⑨内転筋腱炎 

ももの内側にある筋肉をまとめて 「内転筋」 と呼びます。この内転筋の付着部に炎症が起きて痛みがでます。繰り返しの過剰なストレス、メジャーなところでは、サッカーのキックなどにより徐々に痛みが増していきます。


痛みがまだ軽いうちに、なるべく早く受診し、的確なリハビリを行いながら競技復帰につなげていかないと、半年以上完全復帰までに時間がかかることもあります。

最初は痛みも軽いですが、だましだまし、キネシオテープやバンデージをして競技を続行することは良い選択ではありませんので、気をつけましょう。

特にジュニア世代では、腱炎だけで済まない場合もあります。

⑩腸腰筋腱炎 

腸腰筋の腱に炎症が生じたもの。


足を繰り返し蹴り上げる動作、サッカーのキック、ダンス、などの繰り返しのストレスが原因です。

腰の部分から足にかけてつながっている大きな筋肉なので、下腹や内ももが痛くなる場合もあれば、ふとももの前面に痛みがでることもあります。

最初の痛みは、太もも前の痛みの方が多いようです。これも、慢性のスポーツ障害なので、まずは練習後のアイシング(どちらかというとアイスマッサージの方がオススメです。)

そして運動前後のストレッチを徹底しましょう。

⑪大転子部滑液包炎

大腿部(太もも)の外側に痛みが出る、使いすぎが主な原因のスポーツ障害の1つ。


太ももの骨(大腿骨)の上部にある滑液包(組織の間にある、動きを滑らかにする役割がある)が炎症を起こしていると痛みが出ます。

安静にし、適切なアスレティックリハビリテーションが必要です。

⑫弾発股症候群

股関節の横の部分で、歩くなどの動作をすると鈍い音がしたり、引っかかる感じがする。

人によっては、股関節が外れるような感じを持つ場合もある。

原因は様々ですが、まずは気になる動作は控え、股関節のストレッチや筋力強化を行えば改善することがほとんど、です。

⑬ヒップポインター

骨盤の横の部分(手で触れる大きな部分)の打撲。

脂肪や筋肉が薄い部分なので、この部分を強く打ち付けて転んだり、野球でのスライディング、直接的な相手との激突、などで生じる。

打撲、なので直後の処置はRICEが基本。痛みが強い場合は、受診をして骨折等がないかチェックを!

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