学びて時にこれを習う、また説（よろこ）ばしからずや

朋（とも）あり遠方より来たる、また楽しからずや、

人知らずしてうらみず、また君子ならずや

学問をすること、そして実践をとおして学問を身につけていくこと、

これは無上の喜びだ。

しだいに同志ができ、見ず知らずの同志たちが集まってくる。

こんな楽しいことはない。

人に認められようが認められまいが、

そんなことは気にかけずに勉強をつづける。

これがほんとうの君子である

これは『論語』開巻冒頭の有名な一章です。

この一節を読むと幕末の若き志士たちを彷彿とさせる。

彼らは、松下村塾や適塾・慶應義塾などの私塾で

旺盛な知識欲と日本を憂う愛国心で

数少ない西洋の専門書を自ら書き写した辞書を片手に

一心不乱に勉強しました。

松下村塾

文化、文明、民族、思想、法律、経済、資本、階級、選挙、分配、宗教、哲学、理性、感性、意識、主観、客観、科学、物理、化学、質量、固体、時間、空間、理論、文学、美術、喜劇、悲劇、衛生、信用、社会主義、共産主義‥‥

これらの熟語は中国から伝わったものではありません。

この時期に西洋の書物を訳す際に、

これまでなかった新しい概念に合う言葉として

彼らが作った和製漢語なのです。

それが逆輸入され現在中国でも使われています。

ちなみ中国の正式名称である

「中華人民共和国」の「人民」と「共和国」は和製漢語です。

このことからの分かるように

近代国家日本の礎は彼らが築いてきたのです。

まさに「君子ならずや」です。

適塾所蔵『ヅーフ・ハルマ』

翻って現在の日本を見てみると

官僚や大企業の経営者のほとんどは銘柄大学出身者ばかり

銘柄大学を目指し、大企業幹部や高級官僚になるために勉強した人たちです。

ちょうど幕末の江戸幕府の状態に似ています。

これまでの安定した社会では学歴エリートが十分に機能します。

しかし、今インターネットや人工知能などAI技術革新により

時代は大きく変わろうとしています。

また政治的にも台頭してきた中国をアメリカは敵対視するようになり

二大大国の冷戦状態となっています。

この大変革の時代に今までのような学歴エリートが対応できるのでしょうか。

政治や経済・経営のほころびがあちらこちらにでてきています。

わたしたち教育者も今一度立ち止まって

教育の方向性を見直す時期に来ているのかもしれません。