手足口病について | キッズクリニック ブログ

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小児科学、特に小児心臓病学を専門に大学教授としての経験を積んだ後、名誉教授になってから、自分の教え子の小児科診療所で子どもを診ています。
こどものことを中心にいろいろ書いていこうと思っていますので、よろしければお付き合いください。

【一口知識】手足口病(てあしくちびょう)は英語で(hand, foot and mouth Ddsease: HFMD)と言います。つまりこの病名は英語を直訳したものですね。名前の通り、口腔粘膜、手足(特に手掌、足底)に水疱(みずぼうそうよりは小さい)ができる急性ウイルス性発疹症です。発熱は1/3くらいにしか見られません。感染が広がることがありますが、隔離は不要です。(理由は本文をお読みください)

 

【はじめに】
手足口病が日本で認識されるようになったのは昭和40~45年くらいからなので、日本では比較的新しい病気といえます。ですからこの病名を聞いたことのないおじいちゃん、おばあちゃんもおられるかもしれませんね。
乳幼児保育施設での感染が多く、その流行は夏がピークとなることが多いですが、他の季節には全くないというわけではありません。感染が一番多いのは4歳ぐらいまでの幼児(2歳以下が全半分)ですが、小学生の間でも流行することはあります

【症状】
ウイルスに感染すると、3~5日間の潜伏期の後、口腔粘膜、手掌、足底、四肢末端に径2~3 mm の水疱がいくつかできてきます。発熱が高熱になることはないので、発熱が問題になることはほとんどありません。水疱は1週間以内に消退します。水痘(水疱瘡)とは異なり、水疱のあった皮膚に痂皮形成は見られません。口内炎や水疱などがあるうちは登園させないのが一般的ですが、決まりがあるわけではありません。
原因は消化器系に感染するウイルスであるエンテロウイルスだと言われています。

【治療】
手足口病に対する特別な治療はありません。ほとんどの場合、自然経過で問題なく治癒してしまいます。
水疱に対して副腎皮質ステロイド剤は効果がないだけでなく、使わない方が良いとされているので、家にあった塗り薬を勝手に塗布するのはやめましょう
まれに急性髄膜炎や急性脳炎などの怖い神経性合併症がおこることがあります。
「EV71;エンテロウイルス71 (注)がこのような合併症を起こしやすいことがわかっていますが、お近くの診療所や病院でウイルスの同定(どのウイルスであるか決めること)はできません。
乳幼児では、ともかく脱水を防ぐことが大切なので、少量で良いので、頻回にミルク、水分などを与えることが大事です。
お風呂には入れても良いですが、ウイルスは唾液や鼻水からも排泄されるので、子ども同士で一緒にいれるのはやめた方が良いでしょう。家族の入った後で最後に入れるほうが安全です。また、同じタオルを使わないようにして、体は優しく洗うようにしましょう。発疹がある時はぬるめのシャワーで済ませるのも、勧められます。

【予防】
ウイルス感染症なので、咽頭から排泄される飛沫(飛沫感染)、便中のウイルス(糞口感染)、水疱内容物のウイルスとの接触(接触感染)などでお友達や家族にうつしてしまうことがあります。便の中のウイルスは、感染症状が消失してお母様が「これで治った」と思われた後でも、最大4週間程度は便の中に出続けるので注意が必要です。こんなに長期間子供を隔離するのは意味がないので、幼稚園・保育園などでの流行時にも隔離は行われないわけです。
感染対策としては、排便後の手洗いが一番大切です。本人が治癒した後でも、手洗いをしっかり続けることが重要です。
つまり日常から職員の方々と子どもたちが手洗いの習慣を身につけておくことが、一番の感染予防になります。保育園では、おむつ係の担当者を決めて、その方は子どもたちの食事介助などはしないようにすることも感染拡大の予防に役立つと言われます。
一度手足口病に感染するとそのウイルスに関しては免疫ができますが、原因のウイルスは一種類だけではないので、別のウイルスによる手足口病にはかかってしまうことになります。手足口病では、ウイルスに罹患しても症状の出ない状態(「不顕性感染」と言います)もあるので、成人での発症は少ないようです。しかし、お母様がかかってしまい「子供と一緒に家の中では這って歩いていました」と話されたお母様もおられたので、お母様ご自身も手洗いをしっかりして、かからないようにすることも大事ですね。

注:「EV71;エンテロウイルス71」「CA6;コクサッキーウイルスA6」
CA6というウイルスによる手足口病では、発症後数週間して爪の脱落が起こることもあることが報告されています。放置していても、普通の爪が生えてくるので、特別な治療は不要です。

以下は参考になるサイトです
【参照】厚生労働省 手足口病に関するQ & A
【参照】厚生労働省 手足口病


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名誉院長 柳川 幸重