【一口知識】5歳以下の子供に多いアデノウイルス感染症は、高熱が5日も続くことがあります。特効薬はありません。しかし、深刻な合併症は多くないので、それほどこわがることはありません。ただ、 まれですが怖いことを起こすことがあるので、小児科医には診てもらいましょう。
5月に入ると初夏となり、少し暑くなります。アデノウイルス感染症である咽頭結膜熱が増えてくる季節でもあります。感染者が手でさわってウイルスが付いたものに触れることで感染したり(接触感染)、感染者がくしゃみしたりして飛び出した分泌物に触れたりして感染(飛沫感染)します。ウイルスは粘膜から侵入するため、マスクをして手を洗っていればかなり防ぐことはできますので、今年は感染は広がりにくい状態です。
5歳以下の子どもに多い感染症です。プールでうつることが多いので、プール熱とも言われることがあります。ウイルスが身体にはいってもすぐに症状が起こるわけではなく、5〜7日後に症状が出てきます。つまり潜伏期は1週間弱ということになります。
アデノウイルス感染症の典型的な症状は、下に書いたようなものです。
高熱で始まることが多く、のどが痛くなり、目が痛くなります。目の症状は、目が赤くなり、痛くなり、眩しいと言い出し、目やにが出てきます。片方の目だけの症状で始まり、別の目にも遅れて症状が出ることが多いです。このウイルスは多くの型(50以上)に分けられていて、結膜炎を伴わないで、喉と高熱の症状だけ示す型もあるので、「結膜」症状にこだわりすぎると、診断に苦しむこともあるようです。高熱のうえ喉が痛いので、食欲がなくなることも多いようです。
ウイルスの型によって様々な症状が出るので、上に述べた咽頭結膜熱のよく知られている症状以外に、咳と鼻水の風邪症状のみのこともありますし、咳や痰が多くなる急性気管支炎や肺炎、血尿の出る急性出血性膀胱炎、嘔吐・下痢を訴える急性胃腸炎、どきどき(頻脈)・むくみ(浮腫)・疲れとだるさが見られる心筋炎、頭痛・嘔吐を訴える髄膜炎など、いろいろの診断名の病気の原因にもなります。また、特徴のある咳と呼吸困難のある百日咳のように見えることすらあります。
このような症状に発熱を伴うのが、アデノウイルス感染症の特徴です。発熱は3〜4日で自然におさまることが多いですが、5日くらい続くこともあるので、ご両親を心配させることが多い病気でもあります。
2歳未満で肺炎になって重症化することがあり、上の子のアデノウイルス感染症が問題なく治ったのちに下の子が重症化して発症することもあるので、注意が必要です。
残念ながら特効薬のような薬はありませんから、高熱でつらそうな時は解熱薬を使うなど、本人の症状を楽にしてあげる薬を使いながら経過を見るのが治療になります。
診断キットはあるのですが、診断が決まっても特効薬はないので、「アデノウイルス感染なので、とくに効く薬はありません、状態を観ながら待つのが一番ですね」というようなあきらめというか、「ある種の安心感」を得るために検査することが多いようです。
高熱であっても元気なら大丈夫なことが多いですが、ただの風邪ではないように感じた時は、上に述べたような診断になることがあるので、小児科医を受診する方が良いでしょう。
キッズクリニック 院長 柳川 幸重
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210521/13/kids-clinic-chitosekai/69/65/j/o0595079414945204348.jpg?caw=800)