じんましん(蕁麻疹) | キッズクリニック ブログ

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小児科学、特に小児心臓病学を専門に大学教授としての経験を積んだ後、名誉教授になってから、自分の教え子の小児科診療所で子どもを診ています。
こどものことを中心にいろいろ書いていこうと思っていますので、よろしければお付き合いください。

じんましん(蕁麻疹)は子供にも大人にも起こる皮膚疾患です。

強い痒みや痛みを起こし、皮膚は少し盛り上がった状態の皮膚『膨疹』(ぼうしん)になり、その形は地図の形のような不定形であることが特徴です。この膨疹が数時間で消失しては別の場所に出現するので、皮膚の膨疹が動いていくような印象を与えられることがあるのも特徴です。ほとんどの場合、1日以内に初めに出現した場所からは膨疹が消失します。

このように『膨疹』の場所が移動していくというのが、普通の湿疹との大きな違いです。湿疹では初めにできた場所がすぐに良くなって、隣に移っていくようなことはありません。

細かく言いますと、悪くなる場所も湿疹とじんましん(蕁麻疹)とは異なります。湿疹は皮膚の外側である表皮とその下の真皮上層に病変が起こるのが特徴です。つまり皮膚の表面に近いところの病変ですから、治療として湿疹の上に軟膏などを塗布するのが良い治療になります。しかし、じんましんで起こるのは、皮膚の深いところにある真皮の血管の反応です。したがって、じんましんには皮膚に塗る軟膏はほとんど効きません。抗ヒスタミン薬の内服が治療になります
(皮膚の状態によっては皮膚に塗る薬が処方されることがありますが、それは主治医の先生の判断です)

直接的な原因がなくて症状が出る突発性のじんましんと、特定の刺激によって起こる刺激誘発型のじんましん、とに分けられます。これ以外の特殊なじんましんもありますが、こどもでみられることは少ないのでここでは触れません。

こどもの突発性の蕁麻疹は、風邪のあとに起こることが多いことが知られています。

じんましんは、急性じんましんと慢性じんましんに分けられます。慢性じんましんは1〜1.5ヶ月以上症状が続くことが特徴です。どちらのじんましんでも、原因が分かることはほとんどありません。

刺激誘発型じんましんの原因で多いのは、寒冷、日光刺激などです。寒冷蕁麻疹、温熱蕁麻疹、日光蕁麻疹などと呼ばれます。入浴・運動・緊張・発汗などの刺激で起こるじんましんでは、痒み、または軽度の痛みのある5mm未満の小膨疹ができますが、これはコリン性蕁麻疹と呼ばれます。この症状も時間と共に消失しますが、同じ刺激で再発することも多いです。

ほとんどのじんましんは、自然に消失します。外来受診されたときは、食べたもの、受けた刺激、今まであったかどうかなどをお聞きします。必要に応じてアレルギー検査などを行うこともありますが、原因が明確になることはほとんどありません

治療としては、抗ヒスタミン薬の内服が有効です。上に書いたように軟膏は原則として効かないのですが、皮膚を掻いたりして湿疹のようになっている時は、ステロイド外用薬をつかうことがあります。

じんましんのときは皮膚を掻かないことが大切ですが、痒いところを冷たいタオルなどで冷やしてあげるのは、一時的にかゆみを抑えるのに役立ちます。これは、子どもさんにも良い症状緩和の治療になります。しかし寒冷蕁麻疹のとき、つまり、冷えたために痒くなった時は、冷やすと逆効果ですから注意しましょう。

まとめると、こどものじんましんは風邪のあとに起こりやすいですが、原因を特定するのは難しいものです。かゆみにたいしては、経口の抗ヒスタミン薬が有効です。外来受診の前に痒がっていたら冷やしてあげると楽になることが多いので、やってみると良いですね。しかし、とても小さい子の場合は冷やしすぎると体温も下がってしまうので注意してくださいね。


キッズクリニック 院長 柳川 幸重