節分の豆は5歳以下には食べさせないようにしましょう | キッズクリニック ブログ

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小児科学、特に小児心臓病学を専門に大学教授としての経験を積んだ後、名誉教授になってから、自分の教え子の小児科診療所で子どもを診ています。
こどものことを中心にいろいろ書いていこうと思っていますので、よろしければお付き合いください。

今年は節分が2月2日になったとのことでしたね。

「節分には歳の数だけ豆を食べる」という昔からの習慣があるので、豆を数えて子ども達に食べさせたご家庭もあったでしょうね。節分の豆まきで「鬼はそと、福はうち」と大声を出しながら豆を撒くのは、我が国の伝統行事ですからね。

伝統を守って家中で楽しく「鬼はそと」と豆を撒くのは素晴らしい習慣だと思います。
しかし、5歳以下の子どもさんの家では注意が必要だということをご存知だったでしょうか?

その理由は、節分の豆で喉(気道)を詰まらせて救急に運ばれる子どもがときどきいるからです。

消費者庁によると、この10年間で5歳以下の子どもが食品を喉に詰まらせた事故(誤嚥と言います)は141件あり、その2割が豆類を詰まらせた事故であるとのことです。別の報告では、6年間で73人と報告されています。1年になおすと、12〜14人が食品で喉をつまらせていることになります。

豆やナッツ類のように大人でも噛み砕いて食べる必要のあるものは、噛み砕いて食べることのできない「5歳以下の子には食べさせてはいけない!」これが覚えておいていただきたい一番大切なことです。

ちょっと大きい子供でも、口に食べ物を入れたまま、走ったり、叫んだり、話したりすることは絶対にさせてはいけません。ちょっとしたタイミングで、食べ物や豆が喉に詰まってしまうからです。食べることに集中させるようにすることが大切です。

「喉につまってしまう」と述べましたが、医者の言葉で言うと「窒息」、つまり「気道につまってしまって、息ができなくなる」ことです。窒息すると、極めて短時間に生命を失う危険の高い、大変なことです。

豆が4、5個ずつ小分けしてある小袋があるので、これを撒けば大丈夫だと思っているご両親も居られるかもしれませんが、食べる時には袋を開いて豆を食べるわけですから、やはり危険があります。5歳以下の子どもの前では食べない方がよいですね。「歳の数だけ食べる」ということで、4歳の子どもが4個しかあたえられなくとも、たった一粒で窒息は起こります。豆まきの後に豆の入った袋が拾われないで残っていて、子どもさんがそれ見つけて開けて、一人で豆を食べることもあるでしょうね。危険ですね。注意が必要ですね。

ある幼稚園では、ちぎった新聞紙を丸めたボールをマメに見立てて投げているとのことで、これも一つのアイデアだと思います。

豆以外にも、こどもは色々なもので喉を詰まらせます。トイレットペーパーの巻いてある紙筒の中に入るものは全て喉に詰まる可能性があるので、子供の周りに出しておいてはいけない、という子育ての意見もあります。覚えておいて良いことですね。

ちょうどこの大きさのミニトマトや、ぶどうやお餅なども喉に詰まらせてしまうことがあります。ミニトマトの栽培は楽しいですが、園児には危険があります。

消費者庁から「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」というニュースレターも出ています。
【参照】食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!(消費者庁)

今回は豆やミニトマトによる窒息について述べましたが、豆以外にも喉を詰まらせてしまう事故を起こす食べ物はたくさんあります。お菓子、キャンデー(あめ)、ゼリー、ドーナッツの一部、りんごなど、数えたらキリがありません。

ものを食べるときは落ち着いて、ゆっくり食べさせることが大事です。
また、食べ物を口に入れたままで遊ばせないことも大切です。

もう一つ覚えておいていただきたいことは、気道に入ってしまった異物(豆、ピーナッツ、ミニトマトなど)は、救急室の先生にも取り出せないことがあることです。特殊な技術と道具が必要だからですね。それでもできるだけ早く取れるところに連れていく必要がありますが、窒息ですから、短時間に低酸素症になって、生命は助かっても後遺症の残る悲しい結果になることが多いことも覚えておいていただきたいことです。
(救急手段として喉ぼとけにメスで穴を開けることもあります)

経験のある医師にとっても、こどもの気道異物の治療は大変なことです。
子どもの周囲にある口に入るものは、全てに対して注意が必要ですね。
来年の節分でも注意してくださいね。

誤嚥とは:飲み込まれた食べ物は食道に入って胃まで流れていくのが正常ですが、間違って気道に入ってしまうことを言います。


キッズクリニック 院長 柳川 幸重