9月23日 午前7時


来たばかりの時とはうって変わり、吸い込まれるように眠ってしまった。

やっと時差になれたというのに、とうとう今日、イタリアを立たねばならぬ。

やり残した事、やりたい事、行きたい場所、挙げればキリがない。

初日に添乗員さんが説明で言っていた、ハイライトの意味(ツアー名にも入っている)がようやくここで理解できた。

ツアーのみんな(と言っても半分)と取る朝食も今日が最後で、心なしか、やはり皆少し寂しさが漂っているように思う。

ロビーで、迎えのバスと添乗員さんを待つ間、山口夫妻と連絡先を交換した。

共通の趣味があることで、日本に帰ったら会う約束をした。

日にちが開くと人見知りしてしまうので、序盤の勢いで予定が合う事が大事だろう。

一番仲良くなった夫婦だったので、こういう出会いの中で、友情が芽生えたのは単純にうれしかった。

きっと向こうから連絡なくとも、自分から連絡するだろう。

そんなよくわからい自信を抱き、バスの乗り込んだ。


人見知り丸出し、敵意むき出しで始まった旅は、最終日をむかえ、またこの人達と会えるかなぁ~と思わすぐらいの一体感と言うのか、仲間意識と言うのか、よくわからない名前も知らない感情が芽生え、フィナーレをむかえる。

それは自分だけじゃなかったようで、添乗員さんも移動のバスで、実はバツ2だの2人の子供がいて、もう成人してるだの、今は飼い猫が一番可愛いだのと、身の上話に花を咲かせている。

それを聞いて、また少し親密になれたと、またこの添乗員さんと旅をしたい。と思った。

旅の終わりのセンチメンタルな気持ちが、卒業式当日まで、あまり話さなかった人と少し仲良くなれた時の様な感情みたいになって、この気持ちが続くのか一時のものなのか、よくわからなくなっていた。


ローマ空港は、思ったほど豪華な創りではなく、アムステルダム空港ほどではなかった。

搭乗手続きが思いのほか渋滞で、免税手続きの時間が取れるかそわそわさせられる程だった。

ツアーの1人が荷物の重量オーバーだったり、Eチケットの機会トラブルだったりと、さらなる時間を奪っていく。

荷物重量に関しては、こちらも人事ではなく、前日夜に、スーツケースにうまく分配し、小さくて思い物は極力手荷物にし、細心の注意をはらったものの、あくまでも感覚での計測だったので不安はあった。

そして、イタリア→日本は大丈夫だったとしても、伊丹→松山にさらなる制限が課せられているので、その辺りも計算せねばならなかった。

そんな神経質なぐらい重量に対し警戒していた自分の前は、1人では絶対持ち上げれないようなケースを2つカートで運んでいるブラジル人のおばちゃんだったのは何かの悪戯だったのだろうか。

しっかり時間を消費したあげく、あきらめて去って行ったが、いったいあのブラジルおばちゃんはどうしたのだろう。


無事、搭乗手続きを済ませ、次は免税手続きへ。

手荷物と預け荷物で手続きしる場所が違うらしく、別行動に。



ウワサでは、ここに中国人の長蛇の列が出来ると聞いていたが、その団体は昨日だったらしく、逆に係りの人を待つという謎の状況だった。

不運な同ツアーの人は、スーツケースを開けてみせろ!的な事を言われ、皆の前で晒される事に。

そこは女性に優しい国イタリア、女性はスルー。そしてジェントルマンの私もスルー出来た。

もしかしたら、おれの荷物は開けて探すの時間かかるぜ!的なジェスチャーが利いたのかもしれない。


無事に全員、免税手続きを終え、搭乗ゲートへ進む。

途中、少しのトイレ休憩と土産を買う時間があり、ユーロを残してもしょうがないので、このタイミングで出来るだけ消費する。


ビジネスクラスでやって来た、迷子の夫妻はひと足先に飛行機に乗り込む。

そして残された庶民達は、ぞろぞろと超狭いエコノミー席へ。

イタリアともとうとうお別れだ。

女子大生達は、寂しさを隠さず大声でそれについてしゃべっていたが、異文化に触れ、器が20倍ぐらい大きくなった私は、彼女達を若いなぁ~なんて微笑ましく見ていた。


10数時間のフライトを経験した私は、イタリア→オランダ間の移動時間など、まったく問題にせず、サービス精神なのか、そういう飛び方なのかは知らないが、ものすごい低空飛行でフライトしてくれたため、ヨーロッパの街並みを飛行機の窓からたっぷり堪能する事が出来た。


アムステルダム空港では、行きにはあんなにあった滞在時間がまったくなく、すぐ搭乗ゲートへ。

ここでは、セキュリティが今までで一番厳しく、すごい最先端な機械にくぐらされ、危険な物を持っていないか調べられた。


ここからまた10時間以上のフライト。

もう1回経験したので、無理やり寝る!という無駄の抵抗は一切するつもりはない。

日記を書きながら旅を振り返ったり、気分転換に小説を読むことにする。


ほんとうにあっという間だった。

初めて異文化に触れ、生の外国語を聞き、コミュニケーションを取り、現地の物を買い、現地の物を食べ、現地の空気を吸い。

文字にすればただそれだけの事なのだが、自分の人生観は確実に変わった事は確信出来る。

貴重な財産はかなり失ったが、それ以上に得る物があった。

帰る前から、次々に行きたい国を考えた。

そして、行く前は、高い所から飛び込むような、躊躇しがちな海外であったが、行ってみると想像以上に簡単だった。

また近いうちにイタリアに行きたい。

その気持ちはかなり強くある。

それが実現出来るかどうかは、私のギャンブル運にすべてが懸かっているのだが、それはあまり期待出来ない。

ギャンブルをする事なく貯金し、旅行費を工面出来たとしたら、海外旅行でわたしは変わった!という本を出版する。

未来の私は、本を出版し、さらにその印税でまた旅行に行けているだろうか。

はたまた、相変わらずネオンの電気代の一部を負担し、貯金せず服ばかり買っているのだろうか。


機内食では、久々に和食を食べた。

カツ丼、と響きがひどくなつかしかった。



そして、海外で日本食を食べるのはオススメしない!という教えも思い出した。

このブログで綴ることで教訓としよう。


相変わらずエコノミー席は狭い。

身体が凝ってしょうがない。

定期的に立って、トイレにいったりしながらストレッチをする。

そのトイレ周辺には、180センチオーバー140キロぐらいの欧米人が2人ほど、裸足で死にそうな顔をしながら中腰になっていた。

約半分の体重の私ですら、狭いと感じているのだ。

この人達にとって、この上ない苦痛の時間なのだろう。

見るたびに少し笑ってしまう。

もし、その人達の間になったりしたら自分もあんな風になってたのだろうか。

隣が、英字新聞を読む細身のおばちゃんでよかった。


そうこうしてるうちに日本に無事到着。

あとは、荷物が無事かどうか。

麻薬犬がにらみをきかしまくるこのエリア。

そして、どの飛行機に乗ってもいつも最後の方に荷物はやってくる。

どうやら無事のようだ。

しかし、行きの飛行機で隣になり、最初の朝食で会話を交わした夫婦の旦那さんの荷物がえらいことになっていた。

ボンボンほう投げられたすえ、ジップがぶっ壊れ、中身が飛び出している。

まあまあのキレっぷりだった。

やはり丈夫なスーツケースに限る。


そして、多くはローマ空港でした免税手続きの書類を提出、換金しに行く。

しない人はここでお別れ。

なんかちょっとあっけない。

添乗員さんは、一番買い物してた我々の返金額が気になったようで、関西のおばちゃんっぽくずうずうしく見てきた。

200万ぐらい返ってきますよ!

と言ったら驚いていたが、そんなに返金枠がない事を知らないのだろうか。

あまりのあっけない解散に、帰っていいのか戸惑う人達もいたが、まあ気持ちはわからなくもない。


駅で電車を待つ間、どの電車に乗ればいいか迷っている外国人がいた。

まだ海外気分だった私は、恐れることなく話しかけ、調べ、両方大丈夫だったので、

ダブルOK!と言った。

それが何故かウケて、そのフレーズが気に入ったらしく、笑いながらダブルOKを繰り返していた。

細かい事は置いておこう。


電車の乗り継ぎ待ちの間、母から連絡があった。

着いて初日にショートメッセージが入って以来、すっかり連絡も返さず仕舞いだった。

その時もちょっと違和感があったし、今も嫌な予感はしていた。

それは、母方の祖母の訃報だった。

まさかだったが、そんな予感はしていた。

自分自身の運はよく理解しているつもりだ。

ギャンブルの引き、雨男、その辺に関してはかなり自信がある。

そんな男の旅行が、フィレンツェでちょっとにわか雨にあった程度で、ヴェネチアも晴れで水位も問題なし、最近めっきり入れる回数が激減した青の洞窟に入れ、ローマダービーの勝利。

あまりに出来すぎであった。

途中でわかっていた。

これは何かあるな!って。

どうも、関空から旅立ってすぐとの事だった。

これは、結婚祝いのお礼を散々先延ばしにし、旅行から帰ってお土産と一緒にお礼を、と、結局、言えず仕舞いだった不幸ものの孫として、自戒の念を強く込め、ここに綴っておく。

一番手の孫であり、一番顔を出さない孫であり、一番不幸者であったが、一番世話してもらった孫も私であろう。

自分の性格をよく理解したタイミングだったんじゃないだろうか。

最後までまったく頭の下がる思いだ。

この旅行が無事終わったのも、この旅行が最高だったのも、ばあちゃんのおかげであったのは間違いない。

この旅行記と思い出の数々、そしてあの青いイタリアの空を、溝辺のばあちゃんに捧ぐ。





























続く