2014年8月17日


ふと気配を察して眼を覚ますと、妻が起きて正座していた。

思わず、「陣痛始まったか?」と聞くと、「破水したかも。」と返ってきた。

でも確信は持てないらしく、困惑の様子だった。

時間を見ると、6時34分。

出来ればもう少し寝ていたい。

しかし、破水は即入院と医者から言われていた。

一応、眠いが携帯で破水について調べる。


ん~よくわからん。


ただ破水なら一刻を争うので、妻に病院へ電話するよう促す。

確信を持てず迷っていた妻だが、病院からはすぐ来るようにとの指示。

一気に緊張感が漂う。

急いで身支度を整えなければ。

いよいよこの時が来たか。


まずは水分補給。

そう思いコップを洗う。

いや待て、きっと長丁場になる。

今のうちに朝食を済ませよう!そう思い、水分補給と食事をいっぺんに済ませられるシリアルの準備に取り掛かる。

そして、食事しながら痛めていた足のアイシングもしよう!

それも思いつき、シリアルの袋を置き、アイシング用の氷嚢に氷を詰める。

複数の事を同時に思いつき、実行出来る。それは才能が故だろう。

アイシングの準備を終え、後ろを振り返ると準備をほぼ終えた妻があきれてこちらを見ている。


はっ!!

目が覚めた。

まだ頭が眠っていた。

それどころではないのだ。

アイシングは20分ほどかかる。

お前の足なんかよりもっと大事な事が起きているぞ!そう自分に言い聞かし氷をシンクに捨てる。

まずは足より頭を冷やすべきだった。


心を入れ替え、5分ほどで歯磨き・洗顔を終え、ジャージに着替える。

冷静になったつもりだったが、その準備中も、こんなことしてる場合なのか?!とちょっと心配になる。

7時ちょうど、無事出発。


今日という特別な日にBGMは何がいいだろうか?と考えたが、色んな事が起こりすぎていい閃きが出てこないので、諦めて無音で行く事に。

道中、妻は破水を確信たらしく、それを報告してきた。

まあ違っていたとしてもかなりリアルな練習が出来たのでいいじゃないか!!

そう妻に言った。

そして、避難訓練もこれぐらいのモチベーションですればいいのにと、人事のように思った。

そして5分程で病院に到着。


インターホンを押し、看護師さんの指示に従い2階へ。

上がると、メガネをかけたふくよかな体系のおばさん看護師が分娩室へ促してくれた。

何を思ったか、ほぼ荷物を車に置いてきたため、看護師さんの指示によりすべて車に取りに帰る。


メガネの看護師さんの声がやたら大きかったので、誰も入院してないのかと思ったが、荷物を持って上がって外で待っている間、赤ちゃんの泣き声が聞こえたので、居るのは居るらしい。

しかし、外に出ると、1回1回インターホンを押し、開けてもらわなくてはならないのでわずらわしい。


機械をお腹に巻かれ、まだ余裕の表情の妻。

陣痛は始まってるらしいが、なんかまだ実感はない。

笑い話をしながら待っていると、これから数名妊婦がやってくるとのことで、初産婦の妻は別室で待機との命が下る。

簡単な引越しを終え、これからに備え今のうちに朝食を済ませたほうがいい。と言われたので、すぐそこのローソンへお遣いに出る。

距離は近いのだが、足を引きずって歩かなければならず思ったより時間がかかる。

いざ着いてみると、これからの長丁場を思い、ついついコンビニで立ち読みしてしまった。

出産の妻を病室に残し、悠々と立ち読みをし、大事な朝食をゆっくり買って帰ってくる夫を、看護師さんはどう思っただろうか。。。

妻には一応、この事実は伏せておいた。

部屋に戻ると、20代中頃の茶髪の元気な看護師さんが増えていた。

色々指示をされ、部屋で待機。

窓の外を見ると、苦痛の表情を浮かべた妊婦さんが、母を連れて歩いて入ってくる。

これで3組目か。

妻はテレビを見て、私はLINEのゲームでひたすらハイスコアを狙っていた。


9時を回った頃だろうか、だんだんと妻の様子に変化が。

どうやら少しお腹が痛くなってきたらしい。

お~いよいよ始まったか。

なんて思いながら、ゲームに飽きた私は小説を読み始めた。


10時頃には痛みが起こる間隔も短くなり、痛みも増してきたらしい。

私は、励ましの言葉をかけた。

そして、痛みが少し引いてくると、また小説を手に取り読み始める。

その繰り返しが続き、その間隔が短くなり、様子を見にきた若い看護師さんの冷ややかな目を見て、小説をバックの中に封印した。


妻に付けられた機械のひとつは、嘘発見器みたいに波を印字し、常に紙を出し続ける。

波が激しい時が陣痛が来た時みたいで、その印字の波の激しさが痛さに直結するみたいだ。

なので、線が動き始めたら痛み始める時で、それが自分にもよくわかる。

あっ!陣痛くるよ!!なんて伝える事を数回続けると、結構本気でキレられた。


一応、水分を取れ!だの、腹は減らないか?痛みはがまん出来るか?など心配して聞いてみるが、無視されたり拒否されたり、なかなかどうしていいかわからずの時間帯が続く。


この数時間のうちに、かなりの苦痛の表情に変わった妻。

これが普通なのか異変なのかまったくわからず、そわそわしている事しか出来ない自分。

看護師さんが定期的にやってきて、普通に帰って行くのできっと順調なのだろうと言い聞かし、痛みに耐える妻を見守っていた。


11時前、助産師さんがやって来て私は外に出された。

出産という壮絶な戦いの中で、やはり動揺していたのだろう。

何故外に出されたのかよくわかっていない。

時間にして7.8分だと思うが、一瞬のように感じ、また、とても長い時間待たされたようにも感じた。


外で助産師さんの説明を受けた。

「お産が始まりました。」

それに対して、しっかり

「そうですか。」

と答えたが、お産ってなに?と同時に思った。

他に色々説明してもらったが、出だしの?のおかげで話しがあまり入ってこなかったが、順調だと言う事はなんとなく理解出来た。

しかしこれは第何段階で、頂上があるとしたら今何合目なのかまったくわからない。

ただただ無事を祈り、妻のいる病室へ戻った。