お元気様です!
司法書士の木藤です。

戸籍謄本や住民票はプライバシーの高い証明書であり、原則、本人のみ交付請求が認められています。しかし、我々司法書士は、第三者請求の特例として「統一請求書」を使用したいわゆる「職務上請求」が認められています。専門法律職という信用に立脚した制度ですので、使用する際は問題が無いか常に慎重を期しています。

日司連から頂きましたこちらの手引きは大変分かり易く良い資料です。

$「不動産金融に強い司法書士・木藤正義」のブログ


興味深い事案もありましたので、一部ご紹介します。

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(以下、職務上請求が出来る場合は「○」、出来ない場合は「×」)。


○ 不動産の買主さんから所有権移転登記に使用する住民票の取得を頼まれた。

× 仲介業者さんから買主さんの住民票を予め取得して下さいと要請された。

【kidoコメント:登記申請の当事者から依頼を受けなければいけません。】


× 金融機関から債務者の現住所、又は、債務者の相続人の調査のために戸籍謄本等の取得を依頼された。

× 末裔の方から家系図の作成のために戸籍謄本等の取得を依頼された。

【kidoコメント:司法書士が「職務上」請求する必要があり、職務上の前提を欠く単なる調査の依頼では、戸籍謄本等を取得することはできません。】

○ 相続人の一人から、自分が不動産を取得する遺産分割協議が整うことを条件に相続登記(所有権移転登記)を依頼され、被相続人の除籍謄本等の取得も依頼された。

× 相続人の一人から、これから遺産分割協議を開くので出席すべき相続人を確定するために、その調査として、被相続人の除籍謄本等の取得を依頼された。

× 公正証書遺言の作成のサポートをしている中で、公証人から相続人の戸籍謄本等を追加提出して欲しい旨の要請を受けた。

【kidoコメント:実務上、公正証書遺言の作成支援も行いますが、司法書士が資格に基づいて処理すべき業務に該当しないため、戸籍謄本等を取得することはできません。】

○ 遺言執行者に選任されたため、遺言者の法定相続人の調査のために、当該相続人の戸籍謄本等を取得した。

○ 相続人から相続登記手続業務についての相談を受け、その回答をするために被相続人の除籍謄本等を取得した。


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事例は以上です。

不動産競売事件においては、債権者(金融機関)の要請により、抵当権が設定された物件の所有者に相続が発生している際に、債権者代位による相続登記を行います。この場合も職務上請求にて戸籍謄本等を取得しますが、現在問題になっているケースがあります。所有者が韓国・北朝鮮の方の場合です。

在日の方や帰化した方でも、出生までさかのぼる除籍謄本を取得するために、例えば韓国に証明書の請求が必要な場合があります。日本から韓国に証明書を請求する際に、我々司法書士の職務上請求は認められていません。

競売申立が受理されても、相続登記に必要な証明書を取得すること出来ず、審理が進まない事態が発生しております。渉外業務が入り組んだ困難なケースです。


まずプライバシーの保護という大原則があり、例外として職務上請求が認められております。よって、例外規定に対しては厳しく制限するのが適切です。これからも慎重を期し、常に緊張感をもって運用にあたりたいと思います。