お元気様です。
司法書士の木藤です。

$「不動産金融に強い司法書士・木藤正義」のブログ


先日の出来事。


いつもお世話になっている社長様から電話があり、知人の相談に乗って欲しいとのこと。すぐその方のご自宅にご訪問しました。

奥様のお話によるとご自宅が夫婦共有名義だが、諸事情により夫持分を妻に譲渡したいとのこと。ちなみにこちらのご夫妻は「元」ご夫妻でして、既に協議離婚が成立している事例でした。

・売買
・贈与
・財産分与

どちらの構成にするかをお客様と相談しますが、「全く分からないのでメット/デメリットを説明して欲しい」と紹介者の社長様からご要請。

この様なケースはよくあります。今回の事例で少々困ったことは、「今すぐ教えて欲しい」と求められたことです。

ポイントは「taxメリット」と「法律行為の可否」です。

目的は譲渡ですから、どちらを選択しても所有権移転登記をすれば、達成できます。しかし、その際に重い税金の負担があれば、そもそもそこまでして今回の譲渡をするべきか、再検討が必要です。

我々、司法書士も実務の中で税務を耳学問で学びますが、さすがにこの様なケースでは慎重に税理士さんに相談が必要です。

専門的ではないですが、一方で「今すぐ教えて欲しい」というニーズにもお応えしなければいけない。「詳細は後ほど調べた上でご報告しますが」、と言う前置きをさせて頂き、おおよそ想定される効果をお伝えました。

そちらをお聞きした上で、お客様が方針を決定しました。

甲区所有者の住所変更や氏名変更も必要であったため、その足で区役所に変更証明書の取得へ。その移動の時間を利用して、いつもお世話になっている税理士さんに素早く電話相談。どうやら、今回の事例ではtaxリスクが大きそうであるので方針転換が必要そうなことが判明。

一方で、財産分与について気になることがあるので民法の条文を確認。どうやら行使期間に制限がありそうですので、知人の弁護士に電話相談。そもそもの法律行為としての可否を確認。どうやらこちらは不可の模様。

財産分与ではそもそも期限を過ぎているため請求権がなく、単純な贈与では贈与税の負担が数百万ほどかかる。売買を選択する場合は、贈与税がかからないために1,000万円ほどの譲渡代金が必要。

単純なストーリーではどれも選択できないので、代替案・折衷案的な物を模索する必要がありました。結論としては負担付贈与の構成がメリットが大きそうなことが判明。区役所で証明書を取得後、再度、お客様にご説明・ご相談をしました。


<今回学んだこと>
(1)専門外のissueがあった時でも、すばやくある程度の回答をお伝えしなければいけない難しい局面がある。

(2)弁護士さん、税理士さんとのネットワークに助けてもらった。

(3)やはり基本に立ち戻り条文の確認は重要。


(1)については、難しいところもあります。浅はかな知識で逆にお客様にご迷惑をお掛けするような事態は絶対回避しなければいけません。

一方で緊急の事態と言うのもあります。

例えば、海で溺れているお子さんがいて、その母親から「あなた、自衛隊員でしょ! 助けてあげて!」と言われた時に「すみません、私は航空自衛隊ですので、海はどうも専門外で・・・」と言えるでしょうか?

浅はかな知識でお客様にご迷惑をおかけしないように脇を締めてかかりつつも、スピード感も重視するバランスが求められます。

(2)についは今回も実感しましたが、やはり「餅は餅屋」。まだまだ知らない実務がたくさんあります。お困りのお客様にお答えするには1つのライセンス、一人の知識では物足りないことが多いです。ネットワークの重要性を痛感しました。

ちなみに、こちらに関連して税理士・新井山先生の呼びかけにより、士業連携ネットワーク構築のプロジェクトに参画予定です。頑張ります。
http://niiyamacf.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-114c.html


まだまだ若輩者、日々精進。これからも研鑽を重ねつつ、ネットワークの拡大にも努めていきたいと思います。




~ご参考として民法~


(財産分与)
第七百六十八条  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2  前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

3  前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。