行政書士を開業する前、私は福岡にある某新聞社とその関連会社で働いていました。もともとは記者職として入社したのですが、あまり才能がなかったせいか、編集部門からは早々と異動を命じられ、その後はシステム部門、管理部門など社内のいろんな場所を経験させていただきました。
短い編集記者生活も、そのほとんどは「整理記者」と呼ばれる内勤部門です。整理部は、取材部門が提稿してくる多くの記事の価値判断をし、取捨選択をし、それらに見出しをつけ、レイアウトして紙面を完成させていくのが役目。いわば「商品」としての新聞づくりの総責任者。地味ではありますが大切な部門です。
そんな整理部を題材にした小説に出会いました。「北海タイムス物語」です。北海タイムスは1998年まで北海道に実在したローカル新聞社で、主人公は、心ならずもその北海タイムスの整理部に配属された新入社員。大手マスコミに憧れ、さっそうと取材して記事を書く外勤部門に憧れながら、鬱屈とした日々を過ごす主人公。彼の職場体験の一つ一つが、私自身の身に覚えのある事ばかり。彼の見た悪夢までが私が実体験したものとそっくりなのです。
現在のマスコミで働く人たちには考えられない、劣悪な環境で製作にあたる新聞人たち。彼らを支えていたものは何か。もう一度思いをはせてみたいと思います。