あたしの夫は、あたしより17歳年上の、64歳なのだけど

 

彼が腎がんステージⅣであることは

 

このブログでも既に何度も書いて来たとーり

 

あたしと夫の出会いは、上司と部下という、世間でありがちな

 

いわゆる職場不倫ってヤツだったけど

 

家を飛び出し、今の夫のもとで暮らし始めて

 

そのうちにあたしに離婚が成立しても、お互いに再婚するつもりはなかった

 

あたしは結婚という制度の窮屈さに辟易してすーっかり懲りてしまっていたから

 

一方、後に夫となった彼は、

 

既に当時でゆくゆくは車椅子生活を免れられないと宣告された指定難病とか、

 

心臓肥大、高血圧…と既にたくさんの病を抱えていたし、

 

おまけに看る当てのない、高齢の母親も抱えていたから

 

それであたしに負担をかけたくないという気持ちからしたがらなかったの

 

それなのに、あたしから彼にプロポーズしたのは

 

彼の腎がんが再発したと、がん宣告を受けたときだったわ

 

彼と一緒にがん闘病生活に臨みたいと思ったから

 

がん宣告を受けたとき、あたしにとってはまさに人生初の経験だったものだから

 

「いたずらにネットでがんのことを検索してはなりませんよ

 

がんにはそれぞれ個人差がありますから、ネット情報は当てにはなりません」

 

と釘を刺す、主治医のアドバイスをも無視して検索しては

 

案の定、怖くなり泣きに泣いた

 

今となっては、これもまた大変いい経験になったと思っているけど

 

がん宣告を受けてから現在までに、

 

効果のあると言われる薬の種類は限られていたけれど、

 

その中でも次々といくつかの抗がん剤を試して来た夫は、

 

あたしのみならず、あたしの心服するメンター、通称・教祖様でさえ恐れ入る

 

驚異&脅威の、鈍感力の持ち主であったりもするのだけど

 

その持ち前の鈍感力と楽天家気質であったことと、

 

投薬治療に耐えうる大きな体であったことも功を奏したのか

 

抗がん剤の種類によっては、時折、深刻な副作用に見舞われたりしたものの

 

何も知らされなければ、

 

まさかがん闘病中であるとは分からない程に彼はぴんぴんとしていたの

 

それがちょっとずつ変わって来たのは、がん宣告されてから5年目ぐらいしてから

 

ある朝、彼の運転する車で出勤中に、

 

彼は突然咳き込み、ろれつが回らなくなってしまったのよ

 

咄嗟にこれは脳梗塞かも知れないと判断したあたしは

 

彼に指示して、最後の力を振り絞って、

 

どーにかこーにか運転中の車を路肩に緊急停車させると、救急搬送してもらったの

 

せめてもの幸いは、あたしが隣にいて直ぐに救急車を呼べたこと

 

奇跡的に、彼はほんのちょーっぴり右手が不自由になったのと

 

数字の認識能力に多少難が残る程度で日常生活に復帰できたこと

 

それから、そのことをきっかけに、夫のかかりつけの病院と職場から

 

車で5分未満のところへ引っ越しもしたわ

 

おぉ、それからその翌年には、

 

試したばかりの抗がん剤新薬で敗血症を発症したのだっけ

 

驚異&脅威の鈍感力の持ち主である夫は、

 

その数日前から40度を超える熱がずーっと続いていた筈なのに、

 

我が家に壊れた体温計しかなかったことと、

 

あんなに毎朝体温を測る習慣をつけろと病院から指示されても

 

それを怠っていたことも重なって、

 

おまけに、呑気な性格も災いして、自分の体調の変化にも気を留めずに

 

そのままフツーに歩いて出勤していたの

 

今にして思えば、異変を示すサインはたくさんあったのにね

 

食後のデザートと称して、

 

毎晩ポテチを食べることを楽しみにして欠かさなかった夫は


ただ一言、「食欲ない」って言って

 

ポテチどころか食べ物に一切見向きもしなくなったし

 

それどころか水すらもほとんど飲まなくなってしまっていた

 

あたしはそんな夫をさほどおかしいとも思わず、

 

どうせ一晩寝たら、体調も回復するわよってぐらいにしか受け止めていなかったの

 

それから、今にして思えば、もはや手指の震えが酷くなって

 

あたしにメールの返事さえも打てなくなってしまっていたり

 

敗血症で既に血を噴き出して破壊されてしまっていた胃腸は

 

水のような下痢で夫を容赦なく苦しめていたみたい

 

あたしがその日の朝食を無理に食べさせてしまったせいもある

 

恥ずかしくてあたしに言えなかった夫はその震える手とぼんやりした頭とで

 

人知れず粗相を片付けたものだから、それは決して成功したとは言えず

 

その後、何も知らぬあたしに、トイレを汚したとこってりと叱られた

 

今にして思えば、その当時、夫は歩いて出勤はしたものの

 

高熱で意識はずーっとぼんやりとして

 

辛うじて立ったり椅子に座ったりで精一杯だった筈なのに

 

それなのに夫はあたしの小さなつぶやきだけは決して聞き洩らさなかったの

 

「月末処理で小銭を入出金出来る銀行に行かなくちゃならないのに

 

事務所の近所にはなかったわね、困った」

 

「乗せて行ってやるよ」

 

車の運転が死ぬほど嫌いなあたしのために、

 

そーやって銀行へだとか乗せて行ってくれたりもした

 

決して良き妻とは言えぬ、あたしも彼のその異変に

 

目ざとく気付くこともなければ、当然、本人すら全然自覚しておらず

 

何せ、高熱に浮かされていた夫の運転だから

 

しばしばセンターラインから大きくはみ出したりして

 

あたしに何度か悲鳴を上げさせたりしたものの

 

あたしもあたしで大層な女で、それでも、彼の異変に一向に気付きもしなかった


でも、さすがに夫の様子が尋常でないことに気付いたのは

 

そーして銀行用事から事務所へと2人して戻った時で

 

こちらが話しかければ律儀に夫は応答するけど

 

それ以外はずっと目を閉じて口を開けたままぐったりとして

 

事務所の自分のデスクの椅子でずーっと伸びてた

 

明らかにおかしい

 

浅黒い夫の顔が茹でたように見るからに赤くて

 

夫の額を手で触れたら

 

日頃は35度の体温さえも疑わしいぐらいにひんやりとしてるのに

 

別人のようにとても熱かった

 

そこで、あたしは慌てて、

 

相変わらず高熱でぼんやりとしている夫に代わって

 

夜に予定されていた、夫主催の会議をキャセルしたの

 

そして、事務所から徒歩5分の自宅へと夫を先に1人で帰らせたのだけど

 

この期に及んでも、早退させて寝ていれば、そのうちにこの熱も引くだろうって

 

楽天的に…いいえ、完全に夫の不調を見くびっていたの

 

おまけに、珍しくその日に限って1人残って残業までしていたのよ、あたしは

 

その夜、とんでもないことが起こるとは露ほどにも思わず、知らずにね…

 

 

to be continued...

 

 

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