マラソンやトライアスロン等の
長距離走やその他のスポーツでも、
心肺機能・筋力などのシンプルな基礎体力から
効率のいい『身体の使い方』が注目される様になりました。
中でも日本人特有と言われる
『ナンバ歩き・走り』について
そのやり方と解説動画などをたくさん見かけます。
確かに省エネで効率の良い身体操作で、
欧米人に比べ、体格や基礎身体能力に劣る
日本人にとっては
とても好都合な技法であり、
それを学ぼうとするアスリートも増えてきました。
しかし、現状で紹介されている
ナンバ等の古武術的身体操作が
ナンバの動作のみや
古武術の型や演武等の
■約束された変化のない動き
の中でのみになっている気がします。
つまり、競技格闘技や球技などの様に
■予想外の変化(力・速度・角度)
■第三者からの外力
(格闘技における相手からの攻撃・球技における体当たり)
の要素がない中での紹介がほとんどで
それらの要素がある状況でどう応用するのか?
の検証がまだまだ不充分と感じます。
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■ナンバのポイント
1,左右の半身を同調させる
2,体幹の捻じりを使わない様に動く
3,腕の振りが少ない
4,全体の上下動が少ない
5,着地の衝撃が少ない・極端な踵着地にならない
などから超省エネ歩行・走行になり
江戸時代の飛脚が1日に200kmも走り、
江戸から京都間を3~4日で走った
と言われています。
某中学・高校のバスケットボール部が
このナンバ走法の身体の使い方を取り入れて
快挙を成し遂げた話が有名ですが、
その後ナンバ等の武術的体操の指導に注力した結果、
全体の平均力が下がったり、
逆に下手になってしまった選手も少なくなかったらしいのです。
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ナンバ操作の使用条件として
■体幹は固めるよりゆるめる方がいい
と言う説があります。
確かに上記の
1~5のナンバのポイントを可能にするためには
体幹部が固まっていては
『上半身と下半身の連動』を阻害します。
しかし、それが良しとされるのも
『運動ジャンル』にもよるかな?
と私は考えています。
ナンバ操作は
1、走行の様に左右対称性の動きを反復する
2、重量物を使用せず一方向に振り切る(バッティング等)
には最適かなと感じます。
ナンバ操作のみでは無理であろう動きは
上段にも記しました、
■予想外の変化(力・速度・角度)
■第三者からの外力
(格闘技における相手からの攻撃・球技における体当たり)
の2点がある競技です。
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ナンバ操作の特徴として
■身体の捻じり運動をしない=効率の悪い往復運動を減らす
と言う事がありますが、
武術的に考えてみても
■太刀や槍などの武器を扱う事
■戦場などで多数が入り乱れている状況
などでは、ほんのわずかであっても、
必ず『往復運動=捻じり運動』
が起こる瞬間があると考えています。
身体操作が上手ければ、
ほとんど自覚されないほどの
往復運動・捻じり運動となるでしょう。
その際に必要なのが、体幹を主とした
一瞬の『全身の固定力』です。
これがないと連続して変化する動きに対応するのは、難しいのではないかと。
昔の刀や槍、鉄製のそれなりの
重量のある物を振り回す場合、
効率の良い身体操作でも、
方向の切り替えや大きな回避動作などで
位置・方向を変える時に限っては
一瞬の『固定力』を使わざるを得ないと考えます。
ゆるむ事・脱力する事ばかりがフォーカスされると、
自由な動きの中で勝敗を決する競技において
最低限必要な筋力と
その身体操作が置き去りにされ、
現状よりもパフォーマンスが低下したり、
しなくてもよい怪我をする様になるのではないか?
と考えています。
ナンバ操作的な脱力による動作、
また変化ある競技に必要な一瞬の固定力、
それらを養成するには
どの様なトレーニングが良いのかについては
またあらためて書きたいと思います。