【機能性胃腸症】 テキスト

 

第1章【心と体をひとつに動かすしくみ】

 

その15 【しくみの構造・機能からみた治療法】

 

 

2.    神経ブロック

 

【機能性胃腸症】の痛みは、腹腔神経節を介していることが多いので、【腹腔神経節ブロック】が有効な例があります。これは、膵臓癌の痛みなどにしばしば行われる手法で、熟練した医師であれば、比較的安全に遂行可能で、うまくいけば除痛効果も高いです。けれども、保険適応になっていないので、施行している保険医療機関は少ないと思います。また、神経ブロックの効果は残念ながら一時期的です。わかりやすい例は、顔面けいれんに対するボツリヌス毒素をつかった治療です。顔面(とくに眼筋)けいれんには、保険適応でボツリヌス毒素を注射してけいれんをとめる治療が一般的におこなわれるようになりました。その効果はかなり高く、けいれんはとまります。けれども、数ヶ月程度たつと、けいれんが再燃してきます。なぜなら、顔面けいれんも、ほとんどの場合、【コップ】から【緊張】【感情】【情報(脳の疲労)があふれることで発症しています。ボツリヌス毒素をけいれん部位に注射すると、神経から筋肉に電気信号が伝わるのを遮断(電気信号自体を消しているわけではありません)するので、みかけ上けいれんはとまります。【ふた】をして【コップ】からあふれるのをおさえている状態です。数ヶ月もすると、おさえきれなくなり【コップ】から【感情】【緊張】【情報(脳の疲労)】があふれてくると、けいれんが再発するわけです。

 

【機能性胃腸症】もまったく同じ原理・法則です。神経節ブロックをすると、腹痛・胃痛・上腹部痛・背部痛は一旦改善・消失します。けれども、数ヶ月以降に、症状が再発してきます。

 

ただ、安定剤をのんだり、神経ブロックをしてしばらくの間は、症状が改善・消失するので、時間をかせぐことができます。その間に、より根本的に【しくみを制御する】治療をおこなうことが可能となります。