閑話休題:うまいこと説明を聞くためには | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

癒着の話が思った以上に反響があり

「こんな、ギョーカイでしか語られない

 オタクな話に食いつきいいな~」

と、驚きを禁じ得ないが

個人的な信条として

「起こってもいないことを心配するのは

 体力・気力の無駄」

を掲げているため、相手を選んで

説明を端折ることがあるYO

 

術前説明の最中に失神されても困るし。

特に「本人ではなくて家族が真っ青、血圧低下」

これがよくない。

いつだったか若かりし頃

子宮外妊娠です、緊急手術が必要ですと説明したら

一緒に話を聞いていたご主人が

う~んと唸ってそのまま失神し、

椅子から転げ落ちた事由発生。

そちらにもかなりの人数が手を取られ、

ただでさえ緊急手術で目まぐるしい中

慣れない男性の介護まで加わり、

外来ナースのまなじりが

90度垂直になっているのを見かけ

たいそう怖い思いをした。

ご本人は割とあっけらかんとしておられたので

(ご主人が先にイっちゃったし)

無事に同意書に署名はいただけたが

家族の部分は空欄。

・・・おい、夫、何しに来た もうそこで寝とけ 怒

 

つまり、医療者側から

過不足なく説明を聞こうと思うなら

怖い怖い言わんことですな。

 

たいていの同意書や説明には

これでもか、と怖いことが書いてあり、

ある意味ホラー。

通常は起こりえないことまで

詳細に記載されていることが多く

内心、「紙面の無駄」くらいに思っているのだが

いかんせん、最近の風潮として

「知らなかったでは済まされない」。

 

人間は、「わし、知らんやった」

が、一番怒りを覚えるものなのである。

思い当たるフシ、あるやろ

 

よって、同意書には微に入り細を穿って

綿密に推敲、ぐうの音も出ないくらいに

練り上げた結果を掲載する以外の方法がなく

全体的にゾンビも真っ青なホラーな仕上がり。

気の弱い若い女の子だと

かなりの確率で号泣してしまうため

ぱっと人物像を見て「これは・・・」と判断されると

説明を端折られる可能性がある、

と思って術前説明に臨んだ方がいい。

 

怖い話は聞きたくない、と思えば

できるだけマイルドバージョンでお願いします、と

言ってくれさえすればそのようにお話しするし

覚悟はできているので、

些細な怖いことも全部教えてください、と

言ってくれれば興奮して

最後までお話しできると思う。

 

術前説明は、もはや

古典落語の域に達しているからである。

(途中で一般と違う合いの手を入れられると

 セリフを忘れることがあるYO)

 

まあ、手術が怖い場合、

怖がるな、言う方が無理なので

逆に思いっきり怖がってみてもいいかもしれない。

どうせ、やせ我慢しても怖いものは怖い。

ただ考えてみてほしい

手術を「する」のはマダム、あなたではない。

 

私だよ(つまり執刀医)

 

執刀医が怖い、言うとらんのになぜ先に怖がる??と

不思議でならない。

全身麻酔で寝とるだけやんけ。

ただし、何かしら起こったときには

お手すきの神様に祈るため

マダムのご近所に鎮座する氏神さんに

「何かの折にはお願いします~

 手術は何月何日です」言うといてください。

そして、お賽銭もちょっとだけ弾んでおけ。

おみくじは引くな。

おみくじ引いて「凶」だったらあかん。

気分は大吉で。

 

最善を尽くして天命を待つ。

 

昔の人はいいこというものである。

 

とりあえず

ここで人生は終わらない予定であるはず

ゲームオーバーはまだまだ先や。

ぜひみんなでガラスの仮面の最終回を迎えようではないか。

はよ元気になってください。くれぐれも、お大事に。