婦人科便り135 リンパ浮腫って? | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ありがとうございます。

 

リンパ浮腫についてお尋ねがあった。

 

がんサバイバーの方は治るための手術や

抗がん剤、放射線療法の後遺症にも

怯えねばならず、なかなか元の生活に戻るのが

大変だとお見受けします。

なにしろリンパ浮腫は

若い健康な女子の、

かつ丼食べちゃった、

浮腫んだことにしちゃえ!的な

健康的日常的体重増加と違いますからね。

 

リンパ浮腫はいろいろな原因がありますが

一番有名なのは

がんに対する術後後遺症としてのものです。

がん手術は、状態によって

転移しそうなリンパ節も

摘出・郭清することがありますが

その行為によりせき止められた

リンパ液が周囲に漏れて

組織がひたひたになると、

いわゆるこれが

「(リンパ性の)むくみ」と言われるものです。

術後の後遺症である場合

だいたい片方だけなることが多い印象。

乳がんだと手術した乳房側

婦人科のがんだとリンパ節を

よりたくさん摘出した側に発症。

 

ちなみに西郷隆盛が罹ったといわれるフィラリア症だと

寄生虫が体のありとあらゆるリンパ管に寄生するため

リンパ浮腫も両側にきます。

西南戦争の時、彼が自分では歩けなくて

みこしに乗っていたと聞きますが

ほんとかどうかぜひ知りたい。え、どうでもいいか~?

現代日本、私はこういったケースを

見たことがありませんが

世界ではまだここかしこで見られる病気の一つ

と聞きますです。はい

 

さて話をもとに戻そう。(よく脱線してごめん)

 

リンパ節=免疫システムの支店

リンパ管=物流の道路

 

と、考えていただけると分かりやすい?

 

リンパ管は全身の血管に沿うように

張り巡らされていますが

かなり細く、手術の時に見ても

2Kではよくわからんです。

4Kでもちょっとわかりにくいくらい、細め。

それはまるで女優のしわ。

これが8Kになるとリンパ管もはっきり

見えるようになるらしく(ある意味恐怖)

近い将来、リンパ管に対してもより繊細に

手術できるようになるかもしれない。知らんけど

8Kは動画ががっつりメモリを食うので

まだまだ実用化されていないですが

そのうち技術が発展してくると

一般の田舎の病院でも

見かけることができるようになる?わーい♪

と期待はしています。

 

で、リンパ浮腫は

物流が滞ると迂回しようとして道なき道を行ってしまい

そこで迷子になるという状態だ、と想像できます。

がん細胞はリンパ管を流れて、

リンパ節でトラップされるので

どうも転移していそうだなと思えば

摘出も必要なんですが

支店を撤去すればそこまでの道が途絶えちゃうので

必要な免疫の物流システムが滞り 

迷子に至ってリンパ浮腫。

免疫最前線の支店はなくなっていますから

そこにばい菌が入ってきても誰も防いでくれないし

周囲は周囲で迷子になって混乱しているため

結果としてばい菌が大暴れして、

赤く腫れ、熱が出る。想像できまして?

 

現時点ではリンパ浮腫の治療と予防は

弾性ストッキングを着用し

生活の上で感染するような行為、例えば

草むしりをするときは長ズボン、とか

蚊に刺されてもかきむしらない、とか

やけどしない、とか

とても小さいけど重要なことに

注意するくらいでしょうか。

ご本人がなにか悪いことをして

これになったというより不可抗力なので

予防も難しいです。

感染してしまうと蜂窩織炎

(皮膚とその下の脂肪に炎症が起きる)

に至ることが多いので、抗生物質を点滴して

治すことになると思います。

 

命は取らないけれども生活の質を脅かすリンパ浮腫

なかなかどうして手ごわいです。


大学病院にいるときがんの術後の患者さんに

しょっちゅう抗生剤を点滴してましたねー

思い出す。

当時は炎症は治るからいいよね、って思ってたけど

毎回病院に来なくちゃならない患者さん目線で考えると

めんどくさくてつらいばっかりです。哀愁

乳がんが対象の「腕のリンパ浮腫」は

ケアができる資格のある看護師さんが増えてきたので

ちょっとぐぐってもらえばすぐ

彼女たちに出会えると思うのですが

足の方はまだまだ専門家が少ないと聞きます。

もしマダムの中で

これはという情報があれば、

どうぞどうぞお寄せください。


お待ちしています。