婦人科便り130:日本は手術療法が多いようですがなぜでしょうか? | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ありがとうございます。

 

Q.

海外ではお腹系のがん治療は放射線が

ポピュラーなのに対して、

日本では治療を開始するにあたり、

ほとんどのケースで

提案されるのは手術のみとなるのは

何故でしょうか?

 

鋭いなあ~ 笑

 

日本で手術療法をお勧めしがちなのは

いろんな理由が混在する。

① 日本人は手先が器用で、

  手術療法を得意としているお国柄である。

② それに引き換え放射線治療医が圧倒的に少ない。

③ よってポピュラーな治療になっておらず

  放射線療法そのものが

  保険で適応になっていない場合もある。

 

・・・という理由もさりながら

 

① 放射線だけで治るがんも少ない。

  特に「腺系」は効かないことが多い。

  例えば子宮体がん、卵巣がん

  効果があるのは扁平上皮癌である、子宮頸がん。

  こちらは放射線が第一選択でも

  おかしくはないです。

② いったん放射線を浴びせてしまうと

  腸管がだんごのようにくっついてしまっており

  いざ手術をしようとしても難しくなってしまう。

  ゆえに、できるだけ病巣を先に取ろうと努力する。

③ 放射線療法後、何年も経っていろんな

  臓器に穴が開いたり

  放射線の影響による癒着で苦しむ人が出てくる。

④ 放射線を当てたことによる「がん」もありうる。

  いわゆる二次がんですね。

 

という、しごくまっとうな理由もあります。

私が実感するのは「②いざ手術をしようとしても難しくなってしまう」ですかねー

放射線治療後、との情報を聞いたら戦意喪失。

心の底から「えー」と声が出る。

なんとか手術を回避できないかと思ってしまう。

難しいから。

 

その放射線治療後にも患者さんの人生は

続いてくはずなので

できるだけ後遺症がないほうがいいし

今後の人生のために

選択肢は広いほうがいい。

・・・「放射線療法をまだ、

人生で一度も受けていない」

このありがたみは

他に手段がなくなった時しか

実感はしないだろうが。

 

特にアメリカなんかは手術ができる医者と

放射線治療ができる医者の数が日本と逆転している。

自然と国内でできることをやろうぜ~ってなるため

日本では摘出可能な子宮頸がんの初期のものでも

なんとか放射線で治療しようとしてしまうと聞く。

(注:又聞きなので、真偽のほどは

   定かではありません)

「がん」に対する私のイメージは「かび」と同じで

取れるもんなら取ってからだよカビキラー。

カビをすべてカビキラーだけで死滅させるのは

困難を極めるのと一緒で

がんも放射線治療だけでは根治は

なかなか難しいと思われます。

 

日本の医療はみんなが思うほど遅れてないし

なんなら世界の水準を超えているものもあったりするし

割とみんな器用よ?

しかもアクセスし放題、

こんなに恵まれた国も珍しいので

みんなで大事に守っていこう→国民皆保険制度、なのであります。