8月28日のブログにも書いているのですが(探した 笑)
ツールとして出てくることが多いので、まとめておきます。
レルミナ
武田薬品の子会社、
あすか製薬から出ているGnRHアンタゴニスト製剤です。以上
・・・とだけでわかる人は少ない。きっと専門家
まず、GnRHとは性腺刺激ホルモン放出ホルモンの略です。
脳の奥の方、視床下部というところから
目の奥にある下垂体へ出されるホルモンで、
会社で例えるなら「課長」です。
下垂体=係長
卵巣=平社員
と考えるとすごーくわかりやすいです。
平社員を働かせるには係長から何かしらの指令が必要ですが
この指令を出せ、と係長に命令するのが課長。
レルミナは、
「係長が課長命令を受け取るのを邪魔し、
仕事をさせないようにする」
お薬です。
似たようなお薬にGnRHアゴニスト製剤である
リュープリンやらスプレキュアやらありますが、
あれらは上記の例えに乗っかれば
「係長にニセの情報を掴ませ、一瞬、下の人間だけで盛り上がるが
すぐにやる気が失せて仕事ができないようにする」
お薬です。
どちらがより、仕事をさせない力が強いかというと
リュープリン・スプレキュア > レルミナ
です。
何も操作されなければ
100ほど出ていた卵巣ホルモンが
リュープリン・スプレキュアではほぼゼロになるのに対して
レルミナは20くらいに抑えます。
ちなみに黄体ホルモン製剤のジエノゲスト・ディナゲストも
卵巣ホルモンを抑えますが、こちらは30くらいになるイメージ。
ところで、GnRHアゴニスト製剤しか存在しなかったとき
何が困ったか、というと
「一瞬、下の人間だけで盛り上がる」のが大いに困っておりました。
具体的に言うと、これらの薬
使い始めの2週間くらいだけ、
卵巣ホルモンが逆にめっちゃ出る作用を持つんですー
目的は卵巣ホルモンを抑えたいのに
逆に出すぎる状態に一時的にしてしまうため(フレアアップ現象)
ごつい筋腫の人に投与するのは大出血の可能性を与えてしまい、
すごーく気を遣うお薬だったんですね。
不妊治療ではこの「卵巣ホルモンをめっちゃ出させて時に排卵させる」
性質も利用して治療に持ち込んでいたりしますが
子宮筋腫や子宮腺筋症相手だと
できれば最初から抑え込まれたほうが命の危険が少ない。
リュープリンだけが武器だった時は
投与開始2週間後に入院してもらったりしてました。危なくて。
なので、飲み始めてから2~3日で
卵巣が黙ってしまう、レルミナがちょー使い勝手が良くて
ほぼほぼ、外来での処方はこれ一点決めになってしまったくらいです。
ちなみに、応用編として
ホルモンのバランスが崩れ、子宮から原因不明の大出血を起こす
機能性子宮出血、と呼ばれる状態が時にありますが
この場合でもレルミナがものすごく大活躍します。
一時的に卵巣ホルモンがばーっと出たりせず
すーっと収まっていくので、
ほんとに不安なく飲ませることができます。
ただし、良いことばかりではない。
ご推察の通り、副作用としては「更年期障害」が挙げられます。
一番多いのは
「頭痛」と「血圧上昇」
特にもともと頭痛もちで、
お天気悪いとバファリンのお世話になっちゃうようなマダムは
頭痛がひどくなる可能性がありますね。
鎮痛剤と併用して飲んでいただき、しのいでもらうことが多いです。
血圧上昇は、ご家族に高血圧の方がいらっしゃるとてきめん。
ご本人が見たことがないような数値をたたき出す。
こちらも血圧を下げるような薬を飲んで、
手術まで頑張ろう、言うことが多いですね。
つまり、手術まで我慢せい、というのを
手を変え品を変え 笑
励まし励まし外来を続けます。すまぬ
レルミナは子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症の治療に使用されますが
一番効果が高いのは手術前の子宮腺筋症、です。
子宮が良く縮み、痛みも取り去るため
間違いなく患者さんたちが
「せんせ、いろいろ考えましたけど
もう手術はしなくてよさそうです」言い始める 笑
・・・んなはずないやん、そんなお化けみたいな子宮~逃がさんで!
みんな大好き保険適応が6か月までなのと
飲むのをやめちゃうと3ヶ月くらいで元通りに復活!
してしまうため、あくまで手術前の処置だYO
たまにずっと飲みたい女子いて、
6か月飲んで、6か月休んで、
年度が替わるとまた飲めるようになるのでまた6か月して、という
勇者もいます。どんだけお金使うねん・・・レルミナ、安くない。
まあ、手術したら後悔しちゃう女子もいることなので
自分の思うように治療してもろたらええ、と私は思います。
しっかし、武田薬品が隅っこの方で
GnRHアンタゴニストの臨床試験をやっていたのは
かれこれ30年前。
製品化するのはこんなに長くかかるのね、と
感慨深いものがあります。
この世の誰かの
血のにじむような努力の結晶として
よいお薬があることに感謝いたしましょう。拝