本日は
お腹が痛いシリーズでお届け。
産婦人科は
謎の「女性の下腹部痛」で呼び出しを受けやすい。
気の利いた内科の先生だったら
夜中でもCTを撮影してくださっているので
大体の見当がつく。
別に気が利かなくても相談してもらって
全然かまわないが、機嫌のよしあしはまた別の話であるからして
患者さんに向ける笑顔をそのまんま、
呼び出した当直医に向けるとは限らない。
起き抜けから完全に100%よそいきの自分、
になれる人って尊敬に値するが、いかがであろうか。
・・・ごめん、謝っておくね。
そんなことはさておき。
子宮内膜症で卵巣が腫れているのを
特別にチョコレート嚢胞ということはどっかで書いた(無責任)。
これがまた、ちょくちょく中身が漏れるため
緊急疾患になりやすい。
大事なことなので繰り返すが、
腹膜というお腹の臓器を包んでいる膜は
何かモノが触るとちょー痛い。
チョコレート嚢胞の中身はどろっとした古い血液なので
それが漏れればかなり痛いと思われる。
病名はチョコレート嚢胞「破裂」だけれど
何もばんっと爆発するのではなく
卵巣嚢腫のどっかに穴が開いて
そこから内容が漏れる、くらいに思っていただければよい。
何が原因かというと
① 排卵の衝撃
② 生理前の卵巣の腫れに伴う刺激
の2点であることが多い。
よって痛みで苦しみ悶えている彼女に
生理はいつから始まったかしつこくお尋ねするわけだが
夜中に急な痛みで悶えている患者さんが
素直に生理がいつだったか話せる余裕がないこともある。
最近はアプリで生理周期をメモしているマダムが多くて
震える指でiPhoneを開き
「ううう・・・いつだったか・・・
(画面が痛みで)見えない・・・」とか言われながら確認。鬼
①もしくは②の状況だと、おおよその推測が付くのだが
間違うこともある。
それは、ちょうど排卵の時期に
卵巣出血もしくは卵巣血腫も発生するからである。
排卵の時に卵巣の表面の血管をうっかりぶっちぎり
卵巣の中、もしくは卵巣の外側に出血しちゃうことがあり
その画像所見が「チョコレート嚢胞破裂にそっくり」なのです。
チョコレート嚢胞破裂も
卵巣出血もしくは卵巣血腫も
その瞬間が一番痛くて、あとは徐々に痛みが治まってくることが多いため
ご本人の状況が許せば緊急手術は必要ないし
卵巣出血だった場合は自然に良くなるので
触らぬ神に祟りなし
なんですが
痛みがものすごくて、ばたぐるっている場合は
痛みの原因を取らなくてはならないので、
どちらの場合も手術になります。しょんぼり
印象としては捻転に比べると、
ぶっちゃけ、痛みは我慢できる程度の人が多いです。
手術にする?と聞くと
え~、薬で治りませんか言う人は、たぶんそんなに痛くない。
これが捻転だと、一刻も早く手術してください
早く麻酔をかけてもらわないと死にます、言います。死ぬことないけど
一番最初はめっちゃ痛かったけど
今は落ち着きました、痛み止め効いています
今夜は眠れそうです、という状態では手術はいらず
後日精密検査をしてから手術に持ち込みます。
チョコレート嚢胞は破裂直後に手術をせず
2~3日経ってしまうと卵巣自体が浮腫んでしまい
嚢胞だけ取るのが難しいので
当日直後に手術にならなければ、
待った方がよい手術になる、と思います。
若いころは破裂=手術だ!と鼻息荒かったですが
きれいに取れないと再発率も高まるので
ご本人さえ、痛みが取れているようなら(軽くなっているようなら)
2~3ヶ月待ちます。
卵巣出血の場合でも、待てないことはあって
どんどん出血の量が増えてきて
止まらない、止まりそうにないというときですね。
お若くても心臓の病気なんかをお持ちで
血液をさらさらにするような薬を常に飲んでいる、という
危険極まりない女子は、まあ、待っていても出血が止まらないので
物理的に出血を止めに伺います。
いずれにせよ
眠れない、食べることができない痛み
は異常なことなので、そのレベルかどうかの判断は
ご本人にかかっている。
この痛みがあと3~4時間続いたら
どうですか、を考えつつ担当医と相談してください。