婦人科便り104 HPVワクチン② | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

さて、HPVワクチンを接種する、もしくはさせる際

気になるのが副作用だと思う。

詳細はしつこいようだが政府広報オンラインに掲載されているので

そちらをご覧になっていただきたい。

全部読むのは骨が折れて骨折するくらい、これでもか、と充実している。

 

コロナワクチン接種でもその副反応から命を落とした方がいるように

どんなワクチンであろうと免疫システムを動かす、ということは

ある意味危険が伴うことの否定はできない。

 

100万人に一人の副作用、と簡単に言うけれど

実際、それにあたった人にしてみれば

たまったもんじゃなく、

ご本人も、ご本人を大事に思う周囲の人たちにも

運が悪かったねとは言ってはいけない。

絶対に救済の道があってほしい、と思う。

 

それを踏まえて考えてほしい。

 

医学とは確率の学問なので、

大勢が助かる道、勝率の高いほうへと賭けていく側面がある。

加えてワクチンとは

おおよそ自分のために打つのではない部分も大きい。

「人類の一員として」見えない敵に向かっていく必要があり

副作用がある一定の人に当たる分には

「しかたがないこと」としてとらえなくてはならない、つらい点がある。

大事な人が「しなくてもよかったこと」に取り組み

それで大きな副作用にたまたま当たってしまったら、と思うと

二の足を踏む気持ちもよ~く分かる。

 

ただ、ワクチンによって

ならないならならない方がいい大きな病気を予防することができ

周囲の人を巻き込まず、悲しませずにすむ、となったとき

どちらを選び取るか、は、人それぞれじゃないかと思う。

どちらをよりつらいかと思うのは自由意志。

誰にも邪魔できない、

最後の権利(FK.フランクル「夜と霧」)なのである。

 

うちのコムスメにはどうしたかというと

有無を言わせず知り合いの先生のところに連れていき、ささっと接種した。

丁寧に説明し、了解を得る、なんてことはしなかった。

コムスメいわく、インフルエンザのワクチンの3倍くらい痛かったとのことで

強制的にさせるもんじゃないといたくご立腹であったが

婦人科医はとかく起こるか起こらないかわからぬ副作用より

子宮頸がんの方により恐怖を感じるため

現在でもあの時接種を決断したことを悔いてはいないし

なんならもう一回くらい接種させてもい~んじゃないかとまで思っています。

 

ちなみに、私自身は接種せずに終わった。

子宮摘出後は接種の意味がさすがにないので

痛さを経験せずじまいでしたが

患者さんにアドバイスするためには

経験してた方がよかったかなと後悔もちょっぴり、あります。

経験者の意見というのはなかなかに説得力がありますからね。

 

それはさておき。

 

私はワクチンを打て!と声高々に皆さんにお勧めすることはしない。

自分と自分の家族のことくらい

誰にも邪魔されない最後の権利を行使して

自分たちで決定していい、と思うから。

そして、その自己決定権が

きちんと保障されている日本であってほしい。

自己責任という無責任に加担することなく

副作用に苦しむ人を必ず救済する日本でもあってほしい。

現時点では、そこんとこ日本はわりとちゃんとしてると思うので

ワクチン接種をお考えな人は十分勉強し、納得したうえで

接種するかどうかを決めてくださいませ。