婦人科便り16 宗教について | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

*記事は2018年7月当時のものですー

 

 宗教の恐ろしさ、というのは医療関係者は感じることがありまして。

 最大は輸血拒否の問題ですかね

 勘違いしている方が多いのですが

 医師というのは「生きる」方向にしか免許をいただけていなくて

 「死ぬ」方向には何の権限もないとです。

 安楽死、脳死など

 「死」に対しても携わることがまま、ありますが

 少なくとも日本の医師免許は「生きる」方向にしか許されていません。

 

 当時の世相を思い出しながらご覧ください。

 ちなみに、当時いた病院は「宗教」が一部はびこっているらしく(該当の宗教ではないですが)

 もっと過激に書いていた初稿は、ダメ出しが出てボツになりました。悲哀

 いろんな意味で思い出深い記事です。

 

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全館空調の整った病院内にいると、季節感が全くありません。

外来の診察室は、なぜか座っているいすの真上にエアコンの吹き出し口がある残念な設計で、

夏に寒すぎ、冬に暑すぎるため、ホルモンバランスを整えるのに一苦労です。

いやまあ、私のホルモンバランス不調はそれだけが理由ではないけどさー。

設計士さんになぜここにエアコン?と聞いてみたかったです。頭頂部が風でそよぐんで、困ります。寒いです。

(注:病院を異動になり、このエアコン吹き出し口問題は解決しました笑)

 

 先日「悪いヒモと手を切るように、自分のために良くないと思われる子宮は摘出も考えてみましょう」

という記事を書いたら、予想外に反響が大きかったです。

女性にとって子宮摘出は、乳房と並んで大きな決断が必要なので、参考にしていただければ。

男性はとかく子宮や乳房に冷たい態度を取りがちですけど、彼らもまた、

自分の前立腺や陰茎には細心の注意と敬意を払うと思うの。

切除だよと言われたら、やっぱり辛いんじゃなかろうか。

自分の前立腺肥大は棚に上げ、他人の子宮をとやかくいうのはやめてもらいたい。

 ま、人類が全員いいひとばかりで、話せばわかり合うことが当たり前であれば、

きっと戦争なんて起こらないので、きっと私たちは一部分しかわかり合えないのだろうと思いますけどもね。

所詮私たちも前立腺の気持ちは分からないし。

そこらあたりの「わかりあえなさ」が芸術や文学になると思われ。

いや前立腺じゃなくてね。男女のね。

 

 ところで、例の教祖がとうとう逝っちまいましたね・・・

 一つの時代がここに終わりを告げようとしています。

 かの宗教がどんどん勢力を伸ばしていたとき、ちょうど私は大学生になったばかりで、

まだ地下鉄サリン事件は起こっていなかったし、頑張っていた弁護士さんも失踪中となっていました。

私の所属していた医学部の同級生にはいなかったものの、

噂では他の学部には信徒さんがどうやらいるらしいとの話も流れてきていましたね。

当時、医学部生は入学したら2年ほど一般教養科目を受講することになっていて、

私はなぜだか「宗教学B」という科目を選択していました。

例の宗教を始め、天理教やら創価学会やらの、いわゆる「新興宗教」を色々比較し、

検討する授業になっておりまして、30年経った今でも鮮烈に覚えているのですが、

担当教官が

「あの宗教はいずれ必ずテロを起こす」

と預言されていたんですよね。あの宗教は、そういう教義だから、と。

同時に悲しそうに

「今の宗教学ではそれを阻止する力はないんですよね・・・」

ともおっしゃっておられて、直後にあの神経毒サリンが猛威を振るいました。

亡くなった方はどんなに無念だったでしょう。残された人もどんなに慟哭したでしょう。

大学生だった私は、あんなに詳しく分かっていながらなぜ、学問にこの事件を阻止する力がなかったのだろう、

と考え考え、堂々巡り。実は事件は、起こってしまった後ではないと、事件にならないのです。

 それから30年(きみまろさんではないけど)。

 あんなことやこんなことがたくさんあって、ありすぎて、

いろんな人々の人生や命に深く深く爪痕を残して、とうとうここまで来たかーと感慨深いものがあります。

 個人的には

 「どうしてあんな汚いおいさんを心から崇めることが出来るのだろう?」とか

 「どうしてあんなすごい施設や毒物や武器を作れる人たちが素人にだまされちゃうんだろう?」とか

 色々思うところがあるのですが、結局のところ、「孤独」という病気には付ける薬がないんだなと。

そして誰彼構わず感染しちゃうんだろうなあ、とつくづく思います。

 私自身は「八百万(やおよろず)」派で、たくさん神様いますよねという思考で、

一つの神様だけを信じないと救われないとか、お布施をしないとダメ、とかケチなこと言う神様は信じません。

いや~手術中に大出血したら(時々ありますよ、正直言って)

とりあえず手が空いている神様助けて~と無料で祈ります。

祈っていたら大抵なんとかなりますので、

きっとどこかに神様「たち」はいるってことで(いや手を動かせ笑)。

 

 誰かが誰かのために何の見返りも望まずに必死に祈る、

その姿が一番宗教的で美しく、人の心を打ちます。

それは、象のかぶりものも、なんとかサティアンも空中に浮かぶ力さえなくても、

十分に人を動かし、明日を変えます。