実家の母に「こんな本読んだら、夢に出てきちゃうんじゃない?💦」と指摘された、この絵本。確かに、絵?雰囲気?は怖いかも。でも、息子達は瞬きも忘れるくらい夢中で読みました!
『ギルガメッシュ王ものがたり』ルドミラ・ゼーマン 文・絵/松野正子 訳(岩波書店)
人間と暮らしても人間らしい心を持てなかった半神半人の王、ギルガメッシュ。動物と暮らすことでやさしさを備えたエンキドゥ。この二人の間に友情が育まれ、ギルガメッシュ王は安らかさを知ります。 遺跡に残された粘土板に刻まれた世界最古の物語を、映像作家のルドミラ・ゼーマンが再創造した絵本です。『ギルガメッシュ王のたたかい』、『ギルガメッシュ王さいごの旅』へと続く三部作は、いづれも息子達の宝物。毎日床に広げて、二人で真剣な顔で向かい合って読んでいます。
息子達に「この本、怖くて夢に出てきちゃうんじゃないかって、おばあちゃんが心配してたよ」と伝えたら、「だから、寝る前一番最後に読むのは嫌なの。でも、この本の後に楽しい本読んでから寝れば大丈夫だよ。」と、彼ららしい打開策。その策の効果のほどは分かりませんが、今のところ悪夢にはなっていないご様子です。
この三部作には、エンキドゥに出会う前のギルガメッシュの残酷さや、女神イシュタールとの生々しい戦いも描かれ、子供達の恐怖心を刺激します。でも同時に、この絵本には、その恐怖心を覆すほどの愛や強さが描かれているのです。やさしさに由来する真の強さの意味、そして生の尊さ。まだまだ幼い息子達にも、きっと彼らなりにそれが読み取れていて、そこに魅了されているのだと信じています。
さて、ここから少し話が変わりますが、よくこのブログでも日常でも、息子達が本を“読む“、“読んだ“と書いたり言ったりしています。が、もうじき5歳になる我が家の双子は、まだ文字を読みません。
私も夫も息子達に積極的に文字を教えることはしていませんし、息子達はシュタイナー教育の学校に通っているため、学校でも7歳まで文字を習いません。学校の先生や他の親御さんにとっても、現時点で文字習得が大きな関心事ではなく、そのことが話題に上ることもありません。
そんな環境に身を置く我が家の息子達。厳密に言えば、文字と音が一致している仮名やアルファベットは結構あるようですし、よく目に入る単語などはその意味を認識しているようです。でも、単語や文を読みあげたりすることはありません。
それでも、息子達が絵本を開き、ゆっくり、じっくりページをめっくっている時、息子達は絵本を“読んでいる“のだと思うのです。読み聞かせてもらった文章を頭の中で反芻しているというだけでなく、描かれているキャラクターの表情、色彩、本の質感など、その全てから、物語を“読んでいる“のだと。
日本語でも英語でも、「行間を読む(”read between lines”)」、「空気を読む (“read situation”)」、「心を読む(“read mind”)」などと言うように、“読む“という言葉は“文字を読む“よりも広義に使われることがあります。
見たり、聞いたり、感じたりした何かを、自分の頭で処理し解釈することを“読む“と言うのであれば、息子達に限らず、子どもは皆、絵本を“読んでいる“と言えるのではないかな。それこそ、文字を追って声に出している大人よりも、もっと広く、深く、そして多角的に、子どもは“読んでいる“のだと思います。
最近、息子達の年齢のせいなのか、彼らの文字習得状況について質問を受けることが増えました。シュタイナーのコミュニティの一歩外には、子どもの文字習得にとても熱心な親御さんや、文字学習に気を揉んでいる親御さんもいらっしゃるのだと気付かされます。
そんな中で、私自身、「息子達が“読んだ“」と表現することには語弊があるなぁと躊躇し始めていた今日この頃。母の心の揺れは、息子達にも伝わっていたようで、先日チャチャがお友達のお母さんに何気なく言った一言がこちら。
「この本、すごい好きなの。ぼく達、毎日読んでるんだよ!・・・あ、でも文字を読んでるんじゃないんだけどね。」
チャチャが加えた文字に関する注釈、今も私の心に後味悪く残っています。これ、最近私がよく言ってた言い方なのです。うーん、反省💦。我が子の口から聞いてみて、あらためて、そんな風に言わなくていいし、そんな風に思わなくてもいいのになと申し訳ない気持ちになりました。
息子達には、今はただただ大好きな絵本を心から楽しんでほしいのです。そして、文字を読むことよりも、物語を“読む”ことができる子でいてほしいと願っています。
そのためにも、(若干誤解を生みながらも、)やっぱりまずは母である私が率先して「息子達は本を読んでいる!」と言い続けていこうと思います。
ギルガメッシュ三部作の作者のルドミラ・ゼーマンは『シンドバットの冒険』も三部作で絵本にしています。こちらもすごい読みごたえです!
『シンドバットの冒険』ルドミラ・ゼーマン 文・絵/脇明子 訳(岩波書店)