恋人、というと交際してるというかんじだが、僕の場合片思いの相手のことだ。

 僕は女の子と付き合うのがうまくない。だけども、一緒にいたい。一緒にいたいのだ。もう意識、だけでもよかった。

 写真に写っている人を見てその場にいると感じない人もいると思うが、僕は違った。写真に写った人がまるでそばにいるように感じた。写真だけではない。映画も、マンガも、だ。これがオタク、というやつなのかもしれない。

 オーギュスト・ルノアールの絵には汗のにおいがない、という話を聞いたことがある。それは写真においても言える。それは汗のにおいがしない。まるで妖精。まるで天使。まるでおとぎばなしの登場人物のようだ。

 僕の頭にひとつの恐ろしいアイディアができていった。

 ああ、あの子を写真に撮りたい。

 でも、モデルになってくれるはずがない。

 僕はつけるようになった。

 僕はバンドのボーカルをやっているような、女の子に夢中になっていた。