かばんには無数の彼女の写真がある。
犬の散歩をして笑っている写真がお気に入りだ。まるでテニス選手のようなさわやかな顔立ちの子だ。幼さのなかに、色気が混じっている。まるで溶けかけのアイスクリームのようだ。
自動販売機でウーロン茶を買った。そして、飲んだ。
ごくりごくるい、褐色の液体を流し込んだ。香ばしい香りがした。背中にひとすじ、汗がつたった。
なんで、こんなことをしているのだろう。
彼女だって、恋人だって、ウーロン茶を飲んでゆっくりしているはずだ。
なのに僕はなぜこんなみじめなことをしているのだろう。
なんで僕はオタクなのだろう。
なんで僕はいじめられているのだろう。
なんで僕は女の子に嫌われるのだろう。
あのおしゃれな、さわかや野郎が憎い。なんであんなすごいことをやっているのだ?
車がガスをまき散らしている。鬱屈している僕の感情のように。ぽたりぽたり、ガソリンがもれている。まるで汗のように。
家に帰って洗顔したい気分だった。