Nick Lowe 「Cruel To Be kind」(恋する二人) | kichi ’s World Review

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 ニック・ロウ 「Cruel To Be kind」(恋する二人)


 学生時代アルバイトも色々やったが、中でも一番長期間で充実していたのが有線放送での夜間リクエストの電話受付とレコードかけの仕事だった。下宿の先輩から斡旋を受けたのだが、音楽好きの自分にとっては幸運だったと思う。

 夕方6時から深夜0時にオープンリールの録音テープに切り替えるまで、3人ひと組で、電話対応とプレーヤー操作係りと膨大なレコードを棚から探してきて渡す係を交代でやったのだが、歌謡曲(当時J-POPは無かった)、演歌、洋楽と3チャンネルに渡る為、歌手と曲名と棚の場所を覚える必要性があり、リクエスト電話も様々な人があり時折イラっとさせられたが、自分には全く苦にならなかった。演歌も含め様々なジャンルの音楽を吸収でき、タダで聴けるのだから儲けものであった。

 プロモーションで配布される新曲を発売前に聞けるし、リクエスト曲の偏りを避ける為の大義名分を利用して選曲の自由を任されており、ちょっとしたDJ気分であった。大学の軽音楽部の職場の先輩が居て、音楽の深い知識やマニアックな世界を教えてもらえたのも幸いだった。思い出すのは中島みゆきと谷山浩子ばかりかけまくる人やパンクロックに集中する人等、個性があって楽しかった。


 そんな時に出会ったのが、ニック・ロウの「恋する二人」だった。先輩が頻繁にターンテーブルに載せていたので、自然に耳に入ってきたが、お気に入りの曲になってしまった。ニューウエーブやパブロックと呼ばれた英国のポストパンク時代の名曲で、ニック自身はエルヴィス・コステロの発掘及びプロデューサーでも会った人で、アイロニーに溢れた詩と軽快な曲調が得意なアーティストである。デイブ・エドモンズ等とロックパイルを結成し、カンボジア難民救済コンサートに出演していたのを見た記憶があった。


 「冷たくするのは優しさの裏返し」と言う彼女に翻弄される男の歌だが、POPなメロディーラインにアコーステックギターとドラムの軽快なリズムが加わり、ニック・ロウ自信ベーシストでもあるのでグルーヴ感が最高の曲である。当時パワー・ポップと言うジャンル分けをされたのも頷ける。

 来日公演も97年ごろ名古屋のクワトロで体験したが、アコーステッィクギター1本での演奏が印象的だった。現在も健在だがカントリーよりの枯れた味わいになってきているのも又魅力的である。


 
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