kichi ’s World Review

kichi ’s World Review

SF、音楽等、個人的こだわりの作品レビュー。

Amebaでブログを始めよう!

「聖痕」 筒井康隆



 絶世の美形であるが故に幼い頃の事件で男性機能を喪失した男の半生を描いた、筒井先生お得意の思考実験小説。本の帯曰く「聖と俗、性と美食、濁世と人類」の対比を浮き彫りにしている。
 機能喪失ともに煩悩から解き放たれ、俗世間の混濁とは無縁のただ美食にのみ享楽を得る男とその美貌と才能に惹かれる男女の引きおこすストーリーと現代日本の昭和40年代からの世相を折込みシュミレートしていく展開は、東北大震災を絡めて終結する。
 和文調に枕詞を駆使し、「」を使わない文体の妙技はいつもながらの筒井調で、自分のようなツツイストには堪らない魅力だが、一般受けしない内容なのも事実である。しかしながら、78歳でこのテーマとは流石である。



聖痕/新潮社
¥1,470
Amazon.co.jp