次の日。
医師や看護師が出勤していて
人数が増え、にわかに活気付くICU。

担当医がうるさくて寝られないでしょ〜と
気を遣って私をICUの個室に入れてくれた。

これが逆効果。

皆から遠くなってしまうせいで
ナースコール押しても来てもらえないんじゃないか?
今もし、いきなり痙攣や呼吸困難になったら
私ナースコール押せる?
個室だと私の一大事に気づいてもらえないんじゃないか?


そんなことを考えてしまって、
結局個室のドアを開けっ放しにしてもらう。
今の私には、うるさい声も物音も何もかもが
この世に生きている証。
静かな中に入れられると、
これから死を迎える為に個室にいる気がして
パニックになってしまう。


その当時、運の悪いことに
私は無料で毎日1話を読める!ということで、
彼とブラックジャックによろしくを
購読していた。

本当、自分を心底恨む。

ブラックジャックは、フィクションもありつつ
ノンフィクションの部分もあり、
医者の汚い部分を誇張したような漫画。

読み応えがあってハマっていたけれど、
私は手術された日からずっと、
完全にブラックジャックに影響されすぎて
勝手に担当医を疑っていた。

絶対何か隠されてる。
手術は失敗してるんじゃないか。
私は髄膜腫ではなくて、
もっとやばい病気なのかも。


疑念を抱いたまま過ごしていた。


母に、何か隠してない?と聞いても、
先生の話ではちゃんとしたって言ってたよ〜
お母さん分かんないもん説明されても。
お父さんなら医療のこと多少わかるから
聞いてみたら?

と、何とも歯切れの悪い返事。


やっぱりお母さんも何か隠してる!
皆ちゃんと言ってよ!!!


と、もうもろにブラックジャックの影響を受けてました私。

人間、追い込まれると冷静な判断ができなくなるんだな〜と
今となっては思います。


有難いことに、私は若くして
脳腫瘍になってしまったこと、

手術が予定より大幅に時間がかかり、
オペに入ってくれていた看護師さんが
入れ替わり立ち替わりで、
最後まで私を見届けられなかったこと、

予想外の脳の戻りに出血したのでは?
と先生もかなり追い込まれて
現場に悲壮感が漂っていたらしいこと、

眠らせようと薬を入れても入れても
私の脳が起きたいと全然眠ってくれず
急遽目覚めさせる方針に変換したことなどから、

次の日、担当でない看護師さん達も
次々とわざわざ私の様子を見に来てくれた。


昨日、最後まで見届けられなかったから
気になって来ました…
と言ってくれた看護師さん達。

本当にありがとうございます。


毎日毎日いろんな人の手術をしているのに
一患者の私を心配してくれて。


温かい皆さんの言葉にどれだけ救われたか。