隠れた名所・下蒲刈島 | かものはしの口遊〜くちずさみ〜

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島根から札幌に来て18年目。相方、娘に猫(雌)も加わり、居場所が徐々に奪われていく様子を口遊みます

下蒲刈島へ行ってきました。
果たしてここをご存じの人はどれだけいるだろうか。呉市の端にある瀬戸内海に浮かぶ島で、かつて江戸へ向かう朝鮮通信使がここへ立ち寄ってもてなされていた土地である。
近くに住んでいながら全くノーマークだった観光地。こうして呉にいるのも何かの縁…とばかりに、行ってきました。

まずは島に渡るために呉より安芸灘大橋を渡る。700円。えええっ?700円?ぼったくりじゃん…。
まぁ、通行量と橋の立派さを秤に掛けたらそんなもんかもしれんが、痛い、ちと痛い。

しかし渡ってしまうと、なるほど700円出してでも見てみる価値はあるのぉ。島特有の空気がある。狭い島をいっぱいに使うかのように張り巡らされた道路に港町の匂いのする町並み。ただ、観光地の割に観光客が少ないのはシーズンオフという以外にも色々原因はありそうだ。
石畳の通り2
目的の観光地区まで来たので、ここで車を置いて石畳の敷き詰められた道を歩く。
かなり観光地として整備されておるのぉ。すれ違う人がほとんど全て地元の方っぽいのが妙に違和感を感じるんだが。

松濤園
松濤園

最初の目的地は松濤園。朝鮮通信使が宿泊した所である。
まず最初に入ったのが、旧木上邸・陶磁器館。

旧木上邸内部

…いやぁ、甘かった。実はあまり大した事はないと思って入ったこの陶磁器館。すげぇよ、建物が。かなりしっかり残ってるじゃないか。
陶磁器はほとんど興味が無かったのでとりあえず観るくらいに留めて、建物を見てまわったが立派に残ってるもんだ。
しかも圧巻だったのが二階。上がった途端、眼前に広がる瀬戸内海。

いやぁ、すごいのぉ。マリンビューではないか。江戸時代からそんな概念があろうとは。

そして続いては旧有川邸・御馳走一番館。通信使の接待所として使われた所で今では当時の調度品やら再現をした模型などを展示。写真禁止だったのが惜しいくらい展示品は良かった。いや、ここが観光地として知名度が低いのが勿体ないわ。

続いて旧吉田邸・あかりの館と御番所。
ここも正直、展示品はどうでもよかったのぉ。ランプとか提灯とかばかりで。ただ両方とも建物はいい感じだった。特に庭園がバックが海というせいか独特の風情を醸し出していて、決して豪華絢爛な造りではないが見ていて心が和むよう…。

旧吉田邸・あかりの館

蒲刈島御番所
蒲刈島御番所




松濤園を後にして、続いて訪れたのが蘭島閣美術館
蘭島閣美術館
ちょっと建物に惹かれて入ったが、中は美術館。しかも全面絨毯敷き。何とも独特な美術館じゃった。観光客はわし一人だったし…。
こんな島の美術館に何かあるんかのぉ…と思って見ておったが、横山大観、下村観山、前田青邨…
なんじゃこりゃ。何でこんなところにこんなもんがゴロゴロあるんじゃ?足立美術館から何か言ってこんかのぉ。
わし一人で優雅に観れたせいもあるんだろうが、かなり豪華な造りで静かで落ち着いた美術館。別館は時間の都合で行けなかったが、今度は行ってみてもいいかもしれん。

続いては三之瀬御本陣芸術文化館
三之瀬御本陣
本陣というからには歴史的なものに違いない!と思って行ってみたら、最近オープンの美術館じゃった。旧来は通信使を案内した対馬藩の本陣があったところらしい。今でもこの本陣の目の前には福島正則が整備した福島雁木が遺っており、当時の様子を忍ばせる。
福島雁木
福島雁木

…ただ、忍ばせるのは外観のみで、内装はそれはそれはキレイな美術館であった。ううむ、美術品は正直いいよ…。
ただ、須田國太郎氏のグリコのおまけが並んでおったり、広島県立美術館の所蔵展でも見た小林和作の作品が多数展示されていたあたりは観る価値もあった。
かつての鎧兜や槍や火縄銃も展示あれていたが、槍や火縄銃に関してはかなり無造作な展示だった。普通がガラスケースに入ってると思うが、吊るしてあったり掛けてあるだけ。ここに立ちよればいつでも出撃出来る体勢になれそうである。

最後に立ちよったのが、白雪楼
白雪楼
江戸時代に立てられた楼閣のようだが、入ると案内役のおばちゃんに促されて茶席へ。抹茶を頂きながらこの建物の由来やら、どんでん返しについての話を聞かせてもらった。ううむ、これで300円だったら格安じゃないか。

忍者屋敷でよく見る”どんでん返し”
奥の扉の手前に大きな斜めな壁が…分かります?

もっと話を聞きたかったが、ここに来て他の観光客がやってきたので敢え無く退散。建物を見ながら2階へ。

海を望む眺望の部屋。料亭のよう。

うぉう、二階もすげぇよ、これ。同じ海を望みながら、松濤園の2階とはまた違う風景。小高い位置にある分風の通りもいいのぉ。
しかも天井には何やら文字が描かれておるし、さすが芸術家の立てた家といったところか。

ううむ、とりあえず携帯で撮った写真でこれだけ見れる絵になってるんだから、実物はもっと凄いです。
いや、本当にここはいろんな人に見て欲しいなぁ。そんな風に感じた隠れた名所・下蒲刈島でした。

石畳の通り
石畳のある風景


…当然のように、帰りも700円…