この世界はシンプルなのに複雑で人間の頭脳は複雑なままシンプルな世界を見渡すコトは叶いません。何を訳の分からないコトを言い出すんだ!同感です!私にも訳が分かりません。理解しようとシンプルに分解すれば答えは出るのですが実際はそんな単純ではありません。純粋な塩はNaClで様々な用途に使用されますがご存知の様に塩辛いです。化学薬品の原料に調合されたり、もちろん食品造りにも活用されます。調味料としても使えるのですが通常、美味しい料理には海水を天日干しで造られた粗塩や岩塩等が利用されます。

 料理やお漬物などに使われる所謂食塩には旨味も求められます、ただ塩辛いだけではなく海中の様々なミネラルが含まれ食べる人に旨味だけではなく配分の仕方により甘味すら感じさせるコトも可能です。勿論美味しい料理には昆布や鰹節やお酒その他いろいろな素材からなる”だし”が隠し味としてメインの素材の味付けやスープそのモノの美味しさに貢献します。このプロセスの無い料理は一般に不味いと表現され、不味いコトで有名な英国料理の特色となっていて、味付けはテーブルに準備された各種調味料でお好みでどうぞとなります。

 調味料は調合の配分が命で、料理に加えていく順番にも経験則で拘りがあるそうです。昆布も鰹節もそのままでも食べれないコトは無いのですが味が濃くて美味しくありません。勿論粗塩も醤油もなめる程度は問題はありませんが過度に摂取ると塩分過多となり身体に善くありません。辛い塩を入れすぎると、いくら水を足しても味は元には戻りません、まして後から砂糖を多めにと言う訳にも行きません。加える時の味見しながらの加減が重要なのです。味覚の美味しい不味いはシンプルですが中身はとても複雑なのです。にぎりずしのシャリはすし職人の掌の温度が一番とされ温度も美味しさに関連します。

 感覚は味覚だけではありません、視覚、聴覚、触覚、嗅覚と沢山ありますが味覚で言う美味しさを求めるならその調合が大事なのです。例えば視覚、眼に感ずる可視光線は混ざり合い、ただ赤一色の花は美しくはありません、光の加減で濃淡のグラデーションや赤色の中に微妙に他の色が混ざり合うコトで赤色は際立ったり、発色したりして美しさに貢献します。ただ視る人により美しさの基準は多様で絶対美と言うのは存在しないのかも知れません。年頃の女優さんはオーラを纏い万人が美しさを讃えますが、美しさはどこを観るかにも依り絶対とは言い切れません。

 例えば聴覚、優れた作曲家が紡ぐメロディは一つの周波数の音だけでは聞く人に感動を与えるコトは出来ません、様々な音階と旋律、強弱と和音の様な組み合わせによる相乗効果、その中に作曲者の個性やその曲に乗るメッセージ、その中にはわざわざ不協和音を織り込むコトもあるでしょう、そんな複雑なプロセスを通過して素晴らしい音楽として時代を越えて万人に共感を与えます、でも音楽にも時代により流行り廃りがあり聞く人にも飽きられたりもします、日々より新しい音を求めそして生み出され忘れられ繰り返す生滅の中で記録として残されたり捨てられたりします。

 例えば触覚、トトロに登場したネコバスと呼ばれる妖怪はレトロな雰囲気のバスの外観を彷彿とさせながら実は毛むくじゃらの化け物、サツキちゃんの前に止まると入り口の穴を広げて迎い入れ、ふかふか毛皮の座席で搭乗客を包みます、行き先を行方不明のめいに替えると目にも止まらぬ速さで野山を駆け巡り目的地に到着します。漫画の世界だから何でも有りなのですが、通常は車酔いを起こすコトでしょう、ふかふかで柔らかいだけでは遊園地の絶叫アトラクションには良くても実際には乗れませんバスやタクシーのシートはクッション性も必要ですが適度の固さが求められます。

 例えば嗅覚、香はとても嗜好が強いアイテムで種類が多くその原料も様々です、麝香と呼ばれる動物の分泌物や龍涎香と呼ばれる鯨の吐出物、伽羅とか白檀とかの香木、その他花や果実、樹皮や根などに由来する植物性オイルなど・・元々は生活臭や体臭を胡麻化す為、着物に香り付けをしたり、部屋に煙を漂わせたり・・私は昭和の人なので線香の香りは蚊取り線香でも気にならないのですが、最近は煙も匂いも煙たがれ仏壇にあげる線香も煙が少なかったり匂いも弱かったり、最近では煙ゼロ、匂いゼロの商品まで有るくらいです。女性が使うオーデコロンでも余りきついと佳い香りとは言えなくなっているようです。

 これらの感覚は仏教では実態の無い幻の様なモノと定義付けられ大事に拘るモノでは無いとされますが、修行僧の様に全く味気ない人生も如何なものかと思います。仏壇のご先祖様は線香の灯だけが見えてその香りのみをいただけると聞いたコトがあります。真実はさて置き、LED電気線香なる強者の商品もある時代です。そんな五感も生きている時にしか味わえないならせめて美味しいモノ、自分が美しいと観えるモノ、感動を呼び起こす音を楽しみ、柔らか過ぎず固すぎないベッドでゆっくり寝て、穏やかな佳き香りに包まれながら暮らしたい・・・

 その為には正反対のエッセンスもほんの隠し味程度、味見しながら、指でつまんでバランス良く加味できたら、未来から訪れる変化もまんざらじゃ無くなるのかも知れません・・・