組織は人を管理します、統制の執れない組織は分裂します、管理統制の行き届いた組織ほど強固なものはありません、しかし人が人を管理するという事ほど難しい事はありません、逆に人が人を完全に管理できると管理人(組織)は全てに勝利します、ただ人は人を完全には管理できません、組織にルールを造っても然りです、ルールとは究極的には信賞必罰即ち、飴と鞭の使い分けです、鞭はご免だが飴も別段欲しくない人は縛れません、力で押さえ付けても人は返って服従しません、そんなことより新興宗教が信者を洗脳していくやり方の方が人を管理するという意味では近道かも知れません。

 

 一般の組織と宗教団体の組織では何が違うのでしょう?勧誘されても誘拐されて入る訳ではないので自分の判断で参加します、これは一般組織でも、暴力団でも同じです、宗教団体の場合はある一定の時期になると大概、信者にお金を使わせます、不動産を取り上げる場合もあります、所有が苦しみの元で、ある信者もそうして心の平安を得たとか何とか寄って集って、時間をかけて脅したり賺したり、洗脳しながら・・一度出させると、2回目3回目のマニュアルもあるかも知れません、出したものは絶対に返してくれません、かくして信者は自分が出した行動に対する否定が出来辛くなって徐々に身動きが取れなくなり、管理下に入ります、団体内の周囲の人も貴方の行動は教義に沿う素晴らしいモノだと言うでしょうし、本人もそちら側に回るかも知れません。

 

 暴力団組織ならどうでしょう?組織に入る時先ず盃ごとで鉄の掟の契約が交わされます、簡単に組織から抜けることが出来ない契約です、最近は不景気の煽りで反故にされてもいるようですが、建前上は暴力即ち力で管理しますが、人は暴力だけでは恐怖心を植え付けることは出来ても管理は叶いません、命の危険を感じれば彼らも本能的に逃げます、それに見合う代償もあるのでしょう、一般の組織と同じく律儀なだけでは出世はしません、人を出し抜いても這い上がっていく人だけが上に上がります、一般と違うところは一度は組織のためにくさい飯を食べてくる必要があるようです。

 

 軍隊という組織はどうでしょう、組織の乱れは軍全体の命運にも係わってくるので、他のどんな組織よりも組織の管理が行き届き統制がとれていなければならないでしょう、法で認可された軍という組織のなかに軍法という特殊なルールを造られ、ある意味暴力団組織より怖い掟があります、部隊長は部隊の先陣を切ります、部隊は全員武器を携えています、敵に対するものですが、隊員からは部隊長の後頭部も狙えます、本当にそんな脅しを上官にしたツワモノもいたようです、私は2回同じような話を聞きましたが同一人物であったようです、勝新の兵隊やくざを地で行く、もしかしたらモデルかも知れませんが、持ち前の度胸と根性で戦功も建て本来ならば部隊長ぐらいには出世していないと駄目なのですが、上官に対する不敬が止む事が無く、終戦までずっと上等兵のままだったそうです、でも田舎への凱旋には上官のそのまた上の上官からせしめた軍馬に乗って還ってきたそうです、こんなアナーキーな人が組織に混じることもあります。

 

 兵法で自分が自分の力で先頭を切って軍隊を引っ張っていく将軍を下将といい、部下の力で軍隊を動かせる将軍を中将呼び、部下に方策を考えさせ軍隊を自由に動かすことが出来る将軍を初めて上将とするという言葉があります、何が違ってくるかと言うと、下将はいくら頑張っても一軍しか管理出来ません、下手すると後頭部を狙われます、部隊の部下には命懸けで戦って貰わなくてはならないし、ある時は命を捨てさせなくてはなりません、将軍が真っ先に死地に赴く無謀は出来ないのです、自分が先頭を切って部下を安心させている余裕など無いのです、軍が一丸となって一人一人が死ぬ覚悟が無いと軍は全滅します、中将になると、複数の軍隊を動かせるかも知れませんが、任せた部下が下将と同じく自分の力を頼んで進軍しても下将と同じ憂き目に会うことになります、上将は自分の信頼する部下が夫々の方策で軍を管理するので、信頼できる部下の数だけ軍隊を管理できることになります、また部下夫々の方策は個性が発現されるので保険効果も期待できます、敵からして予測困難な波状攻撃も可能になり勝利の道が近くなります。

 

 では上将の仕事とは何でしょう?上将の仕事は仕事を任せる部下の選任に尽きます、そこには上将の好みとか上将に気に入られるとかは関係なく、自分の代わりに方策を練り実行する能力があるか無いかで選択しなくてはなりません、これには向き不向きがあります、いくらいい奴でも選んではいけないこともあります、また上将の器の中だけの判断でもないようです、ある時は敵側からのヘッドハンティングも必要かも知れません、ある時は上将自身が将棋の駒にされるかも知れません、でも任せるという事はそういう事かも知れません、上将には上将の命懸けがあるのです、それで初めて為し得ない事を為す可能性を得るのかも知れません・・・

 

 兵隊には個性は無用です、始皇帝陵の兵士の様に一人ひとりの顔は同じものが無いそうですが軍隊としてはみな同じです同じ鎧に同じ髪型で統一されています、スターウォーズのクローン部隊の様な脱個性が理想的です、兵士にも向き不向きがあるので、身体能力的にも忠誠心的にも出世欲的にも理想に近い兵士を選びそのスタイルをモデルに訓練教育で複写していく作業が必要になります、最近の鍵は複写防止機能が付いていますが昔の鍵は倣いと

言うスタイルで複写されました、2つのクランプのうち片方に複写したい鍵をセットし、もう一方にモデルごとに用意された鍵の素材をセットし鍵のギザギザに沿って倣うと素材の方が同じ動きで同じギザギザにカットされていくというものです、この倣いという加工法はモデルさえあれば、複雑な計算処理もCNC加工機も要らずアナログで同じものが複製できたので、結構歴史があります、私の好きなローテクニックなのですが、自衛隊の戦闘機の重要な部品で複雑な多角柱を段々に加工した3Dカム式の部品があったそうです、極限環境でも信頼が置けると言うことで製作の必要があり加工法を研究されたそうですがアナログの倣い式が最も安価に正確に製造できたので採用されたそうです。

 

 人間の管理も同じようにアナログな方法で、管理しやすい管理されることに向いている人材が存在しますそんな人材を上手に選択し、かつ自分の代わりに仕事をしてもらう為には、自分の方も変わっていかなければならないかも知れません、そして成功すれば同じスタイルが次の人選にも生きてくるかも知れません・・・ただ箸にも棒にもかからない人は存在します、いくら魅力的な人であっても、間違っても管理しようとしたらいけません、後頭部狙われます・・・