僕とおかんと、時々太志
僕は、ひやひやしていたんだ。
そんな僕よりも隣のおかんは、もっとひやひやしている様子だった。
中学校まで、僕の学校での成績は中の上ぐらいだった。そして受験戦争を勝ち抜いた結果、念願の公立高校へと進んだのだった。おかんも私立ではなく、公立高校に合格したことでぴょんぴょん跳ねて喜んでいた。
しかし高校に入ると、最下位を争うまでに僕の成績はなってしまったのだ。
それはたぶん、この公立高校に合格し、おじいちゃんに新しい携帯ゲーム機を買ってもらったからだと思う。
そして高校1年生の1学期が終わり、今日、先生におかんを呼び出されたというわけだ。
僕とおかんの二人は、ひやひやしながら高校の門をくぐった。
門をくぐり下駄箱に行く途中、親を呼び出されたのは僕だけではないことを伝えたが、おかんのさびしげな顔は変わらなかった。
下駄箱から僕の教室の前に着くまでは、何も話さなかった。
教室の前の廊下にイスが四つ並べられてあって、左側の端におかんが座り、一つ空けて僕が座った。
おかんが、少し落ち込んでいるようにも見えた。
僕はおかんに「馬鹿でごめん」と小さく言った。
おかんは何も言わずに首を小さく横に振った。
教室では、先に来ていた一組の親子と先生の話している声が聞こえた。
その声は、クラスでも飛びっきりのデブの太志の声だった。
太志は勉強する時間があれば、何か食べていた方が良いと強く語っていた。
勉強をしても何も生産性がないという、何か食べて消費し、また誰かが生産し、そうやって経済は成り立っている。太志はちょっとでも早く、動きの鈍い経済を回転させたいみたいだった。
太志親子と先生の話は、とりあえず健康のために痩せなさいという方向になった。
太志はダイエットを始めていると言いだした。
毎日夜、お風呂上がりにガリガリくんを食べています。と胸を張って発表したのだ。
さっきまで落ち込んでいるように見えたおかんは、顔を上げ僕の方を見て、大きくうなずいた。
よし、次は私達の番だ。行くぞー。と言わんばかりの空気だった。
何が、行くぞー。か僕には、分からなかった。
腹痛
朝8時。学校に行く前。
もうすぐタイガが迎えに来る時間だった。
僕は、まだ自宅のトイレの中で踏ん張っていたのだ。
「はやくしなさい」とおかんの声が聞こえた。
こうなったのも朝、食べた肉が悪いのだ。
僕は、おかんに言いかえした。
「ちゃんと中まで火を通せよ!!」
ちゃんと火を通さないとお腹が痛くなることを学んだ中2の初夏だった。
そして、いつもより5分ほど遅れて家をでた。
家の前には、もうすでにタイガが僕を待っていた。
「よう!」と僕は言った。
いつもと違う様子だった。
それもそのはずだ。タイガの隣には僕の元カノのアヤがいたからだ。
中学生になっていつのまにかできていた初めての彼女だった。
いつから付き合っていたのか、はっきりした日にちはない。
しかし、お別れしたのは先週の土曜日だとはっきりしている。
アヤの方から、別れたいと言ってきたのだ。
そして今日、ヨリを戻したいってタイガに相談して来たのだろうか。
タイガが、口を開いた。
「オレたち付き合うことになったから」
それからいろいろと話を聞いたが僕は覚えていない。
最後にタイガが言った。
「黙っていて悪かった。男のけじめとして殴ってくれ。」
僕は、ズボンの右ポケットに持っていたライターを取り出し
自分の右手に火を通して、おもいっきりタイガのお腹を殴った。
タイガを見て思った。
ちゃんと火を通しても、お腹は痛くなるんだなーと。
愛
僕には大好きな彼女がいる。
僕は彼女を愛している。
彼女も僕を愛している。
僕達は愛しあっている。
しかし、僕には弱点がある。
よくケンカを売られることだ。
よりによって、彼女と一緒に居る時に
ケンカを売られてしまった。
「どこ中やー!!」
むっちゃ切れている。
僕は冷静に答えた。
「セカチュウです」
3位決定戦
もうすぐ3位決定戦が始まる。
ドイツ対ポルトガルが始まる。
僕はウキウキしていた。
友達からメールがきた。
サッカー何チャンネル?!
僕はメールを返した。
NHKよー!!
友達からメールがきた。
「ありがとう。衛生放送でもあるらしいよ。」
ときた。
衛生放送で見たら絶対バイキンはうつらないだろう。
と思った。
