2015年 イギリス・アメリカ・ドイツ
1920年代のデンマーク。女性として生きることを望んだ夫と、その意思を支えた妻。世界初の性別適合手術を受けた画家夫婦の無償の愛をつづる感動の物語。

すごい映画見ちゃったな…と言うのが感想です。
エディ・レッドメインは、ファンタスティック・ビーストで初めて見たときから、何かつかみどころのない魅力のある人だなと感じていましたが…。

この映画では、本当にドキドキさせられっぱなしでした。衣装部屋の鏡の前でのヌードシーンには、思わず息を飲みました。衝撃的でした。エロティックというより、ただただ当惑…。その後のストーリーを追っているうちに、またあの画面を思い出すと、今度は悲しくなってくるのです。

お互いに画家という職業で、手を取り合って進んで来た夫婦。これからもずっとそうであるはずだったのに、些細なきっかけと、いたずら心から、夫は女性としての人生を歩み始めてしまった。あのきっかけがなければ…?いや。それでも長い人生のどこかで、同じことは起こったのかな。もはや夫ではなくなってしまおうとするリリー、夫としてではなく、ひとりの人間として支え続けることを決意する妻。強いなぁ。そこに至るまでには、きっと女としてものすごい葛藤が有ったろうに…。「性別を乗り越えた」のは、リリーだけでなく妻もですね。

手術後の経過が良くなくて、とても辛くて、顔面蒼白になりながらも「ようやく自分になれた」と微笑むリリーがとても幸せそうでした。「赤ちゃんに戻り、母が私をリリーと呼んでくれた」と夢の中の話をするリリー。一番素敵なシーンです。

今やテレビのバラエティ番組をつければ、ほぼ必ずと言えるほど、「オネエ」の方が出ています。マツコデラックスさんみたいに、自分の番組を持っちゃう人も…。その立ち位置は大抵「いじられ役」で、私たちを笑わせてくれる。でも、この映画を観たあと、私は単純に笑えなくなりました。きっとこの人たちの内面もリリーの様に、迷い、苦しみなど…乗り越えてきた、乗り越えていく人生があるのだなと。