”本物を見失う風潮” | はんこや夫婦のつれづれ日記

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黄綬褒章受章・現代の名工・なにわの名工・厚生労働大臣検定一級印章彫刻技能士・愛知県印章協同組合技術講習会特別講師・全国印章技術大競技会審査員の「きあんおじさん」が、はんこのうんちく・職人としての生き方・はんこ業界のあり方を綴っております

 あかあかと 日はつれなくも 秋の風

【作者】松尾芭蕉

 

 

印章の日のキャンペーンポスターは、8月から店頭に掲示させてもらっています。

毎朝、シャッターを開け、「押印は あなたの意思の ファイナルアンサー」というキャチコピーを見ていて、何かが頭の芯に残り続けています。

はたして、押印は意思のファイナルアンサーなのだろうかと・・・

明治の太政官布告以降、そういう時代が長く続いてきました。

その印章の価値がそのまま続いていたら、確かにファイナルアンサーを示す大切な道具であることに間違いがないのですが、どうだろう、社会は今まで通りを許容してくれるのだろうか。

人の意識はどうだろう。

印章にそのような価値を認めているのだろうか。

印章を販売している人はどうだろう。

・・・販売している人は、勿論、価値を認めているはずである。

では、どうしてその価値を有する印章が見当たらないのだろう。

悲しいことですが、魂の入っていない「死んだハンコ」をよく目にします。

「死んだハンコ」は、今は「流行」として捉えられているかもしれないが、死んでいるのだから価値が無く、価値がないものは社会から見捨てられることは然りかなと考えます。

印章を日々作っている人はどうだろう。

そこには、未来を語りたい。

きちんと「工藝」として印章をつくり、それを自覚することが大切だと考えます。

「売れるから」とかいう言葉に惑わされずに、「おしで」の考え方に戻り、自分の技術を、自分の手をしっかりと見据えた印章を作製してほしい。

手彫りや手仕上げ、機械彫りなどという些細な事象に振り回されることなく、先人より継承されたものを今の時代に「約束」を取り戻すために、「玄人の工人」として共に頑張りましょう!