途中からなので
下記☟
”これまで”を
お読み頂けたら
嬉しいです
はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
☟前回文末部分
「私も一度、上の者がおかしゅうなる瞬間を、目の当たりにしたんじゃけぇ」
「おばあさんも、実際に目撃されたんですか?!」
織田村が前のめりになって聞き返す。
「ほうよ」と、老女は身体全体で頷いた。
「ホントに、あれらは、急におかしゅうなるんよ」
矢儀は、ペンを握り直し「ちなみに、いつ頃のことですか?」と、問う。
老女は俄然はりきって喋り出した。
☝ここまでが前回でした
「ありゃあ、たしか池田のお義母さんが亡うなった年じゃったから……昭和五十年代の半ば頃かねぇ。姑が亡うなって、嫁の私が集会に出るようになったんよ」
矢儀は、メモ帳にペンを走らせる中、隅っこに〝池田〟と書き足した。
話の流れからすると、目の前の老女の名字は、おそらく〝池田〟だと思われる。
「そうそう、夏の暑い夜じゃったわ」
記憶が甦ってきたか。老女は、何度も頷きながら、軽快に喋り続ける。
「集会のあった帰り道、真っ暗ン中で話声がするけぇ、懐中電灯を向けたんよ。ほしたら、消防団の建物の影に、若いカップルがおってね。どっちも上の者じゃったわ。小汚い格好で、どっかすれた感じがするけぇ、すぐわかるんよ。それに未遠じゃあ考えられんわ。まだ十代の子供が、遅い時間に逢い引きするなんて――」
調子よく喋っていた老女は、そこでふと、話し相手が中学生と思い出したらしい。
「いや、まぁ」と、幾分恥ずかしそうに、手をひらひらと振って、ひとり盛り上がる。
「もちろん、私ゃあ、何も見んかった振りをして、通り過ぎようとしたんよ。じゃけど、女の子のほうが、急に苦しそうな呻き声を上げ出してねぇ。最初は具合が悪うなったんかと思うちょったら、急に豹変したんよ。雄叫びを上げたり、ケラケラ笑ったり。かと思うたら、いきなり泣き出したり。結局、相手の男が、女の子を引きずるように連れて帰ったけどね。まーぁ、とにかくたまげたわ」
老女は、若干曲がった背中を精一杯仰け反らせ、驚いてみせた。
〜続く〜