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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
矢儀は、とりあえず自転車を降りた。左側のコンクリート擁壁を、じっくり眺める。
稔と美紀の話では、上へ続く道の入り口は削られ、わからなくなっているらしい。でも、道そのものはあるはずだ。舗装された部分より上に上がれば、入り口は見つかるかも――
矢儀が想像を巡らした時だった。
カーブの先から、ひょっこり人が現れる。
(☝ここまでが前回)
やや背中の曲がった老齢の女性だった。パーマでボリュームを出した短い髪は、白色とも灰色ともつかない色。年は、八十代か。老女は足を止め、坂の上から胡乱気な視線を向けてくる。
「あのー!すみません。ちょっとお聞きしたんですけど」
矢儀は、自転車を路肩に止め、老女の元に駆け寄った。いかにも大昔を知っていそうな人物だ。
「僕たち、仁保中の、生徒で、郷土史を、研究して、いるんですが――」
緩やかな坂道とはいえ、一気に駆け上がったせいで、息が切れる。
「ええ? 何て?」
老女は、案外大きな声で聞き返してきた。おそらく耳が遠いのだろう。
「僕たち、仁保中の生徒で、地元の歴史を勉強してるんです」
矢儀は少し大きめの声でゆっくり話す。もちろん、笑顔も忘れない。
間近に見た老女は、目尻の皺も深く、頬のたるみも目立つ。だが、矢儀には、学校で一番かわいいと評判の女子より、よほど魅力的だった。こんな素敵な女性を、ここで逃してなるものか。
「ぼくは矢儀と申します。あとの二人は、織田村と……兼行です」
織田村は、駆け足で坂を上がって来ていた。一方、兼行は、あらぬ方向を見ながら、面倒臭そうに近づいてくる。
矢儀はさっさと話を戻した。
「それで今、未遠の石段について調べていて――」
老女の眉根がぐっと寄る。
予想通りの反応だ。矢儀は、なに食わぬ顔で続けた。
「下ったところに、古い石段がありますよね? 実は昨日、未遠の方から、石段以外に、石段の上に上がる道もあるとお聞きして――」
「上にゃあ、立ち入るもんじゃない」
深い皺がさらに深くなり、老女の目つきが変わる。